タイム・バインド(時間の板挟み状態) 働く母親のワークライフバランス 仕事・家庭・子どもをめぐる真実 アーリー・ラッセル・ホックシールド著/坂口 緑、中野聡子、両角道代訳 ~家庭のあり方こそ考えさせられる
評者 江口匡太 筑波大学システム情報系社会工学域准教授
本書は米国のファミリーフレンドリーな大企業で働く人々のドキュメンタリーだ。明らかになっているのは、育児休暇やフレックス勤務がほとんど利用されていない事実だった。
上司がこうした制度を利用する従業員をやる気がないとみなすことは当たり前で、だから従業員もキャリアを考えれば制度の利用を躊躇する。もっと深刻なのはほぼすべての人が、そもそもこうした制度を利用したいと思っていないことだ。取締役、管理職といった会社の中核的な人々だけでなく、シフト制で夜勤もする工場労働者まで仕事に逃避している。家庭よりも職場のほうが居心地がいいという逆転現象が広く観察された。家庭にいるほうがストレスがたまって苦痛なのだ。
この会社ではモチベーションやロイヤリティを高めるため、さまざまな取り組みをしてきた。従業員の働きぶりをきちんと評価してくれるから、仕事に誇りを持てる、だからモチベーションが高まり、利益もあがる。
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