未曾有のIPO仕切るサウジ・プリンスの改革

脱・石油依存政策に勝算はあるか

サウジは14年まで歳入の約9割を石油収入に依存していた。14年秋からの原油相場の暴落により歳入が激減する一方、シリア反体制派への武器・資金の供与やイエメン空爆などで、歳出は予算を超過。15年は財政赤字幅が急拡大した。15年10月にIMF(国際通貨基金)は「5年以内に金融資産を食い潰すおそれがある」と警鐘を鳴らした。

付加価値税の導入や公共料金の補助金削減など、国民の痛みを伴う政策で改善を図るが、16年も3262億リヤル(約9兆5000億円)の赤字が続くと試算している。

サルマン副皇太子がアラムコのIPOで狙うのは単純な売却益ではない。既存の公的投資基金であるPIF(パブリック・インベストメント・ファンド)の傘下にアラムコ株の残りの持ち分を移管。PIFにはほかの政府資産も管理させ、2兆ドル(約220兆円)規模の世界最大の政府系投資ファンドを作り上げて、投資収益の多様化と拡大を図る。「20年後にサウジは石油に大きく依存する経済ではなくなる」と力説する。

欧米流で国情に適さない改革案

ただ、中東ウォッチャーからは、実現性に懐疑的な見方も出る。「ビジョン2030の実現には社会システムそのものの転換が不可欠。サウジの国情を理解していない、欧米コンサルタントの作文であり、実行に移すには非常な困難が付きまとう」(エネルギーアナリストの岩瀬昇氏)。

アラムコのIPOは、国内のリヤドの証券取引所で行うとしているが、到底、そこでさばける規模ではない。サルマン副皇太子が「海外上場の可能性も排除しない」と話すとおり、ニューヨークやロンドンでの上場が視野に入る。

難題は、その場合、厳しい情報開示が求められること。「透明性を増すことが大事」とサルマン副皇太子は強調するが、ベールに包まれていたアラムコからの国庫、王族への資金の流れが明らかになれば、民衆の不満や他王族からの反発を誘発するおそれがある。

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