キンドルでさえも、ガラパゴスの罠にはまる なぜ日本は「電子書籍の墓場」なのか(下)

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出版デジタル機構は、この11月30日で、経産省の支援事業「緊デジ」(コンテンツ緊急電子化事業)での出版社からの申請を締切る。この事業は、当初、来年3月までに「6万点電子化」を目指したが、11月16日現在の申請済タイトル数は、たったの8503点、申請済み出版社は374社にしか達していない、

「キンドル」は11月19日から日本発売が開始され、初日出荷分は売り切れたというが、それはあくまでネット販売での話だ。私の友人は、都内の家電専門店ですぐに購入できた。「別に行列ができているわけでもなく、売り場に並んでいた」という。

それなのに、新聞報道では「売り切れ」が強調される。実に不思議だ。

日本の著作権はややこしい

それでは、ここからは、順を追って、(3)から(7)を説明しよう。

まずは(3)(4)の著作権の問題だが、日本の著作権の使い勝手の悪さといったらない。話をわかりやすくするために、著作権を土地や建物の権利と同じと考えてみよう。

著作権というのは、土地や建物と同じように財産権の一種である。だから、売り買いはもとより、貸し借り、一部の転売もできる。また、一つの土地に何人かの地権者がいる場合と同じように、一つの著作物に何人かの権利者がいる場合もある。つまり、権利者が多かったりすると、非常にややこしいのだ。

たとえば、文芸作品などは作家一人のものだからいい。しかし、漫画となると、漫画家以外に原作者いる場合がある。また、実用本になると、原稿を書いた著者のほかに、取材やリサーチをしてドラフトを作ったライター、写真を撮ったカメラマン、図やイラストを描いたイラストレーターなどの著作者がいる。そこで、電子化するとなると、改めて権利者全員に許可を求めなければならない。そのうえで、各人の利益配分まで決めなければならないのだ。

こうしたことをひと口に「著作権処理」と呼んでいるが、この作業は手間と時間がかかりすぎる。つまり、この点だけでも既刊本の電子化は面倒で、タイトル数はそうそう簡単に増えない。

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