フェイスブックは「中立」な報道機関ではない 「アルゴリズムに偏見はない」は幻想だ

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ギズモードは4月にも、フェイスブックの従業員がマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)に対し「トランプ大統領(の誕生)の阻止に向けて協力する」責任が同社にあるのかどうか尋ねたと報じた。フェイスブックは選挙に対して影響を行使しようとしたことはないとコメントしている。

「自覚」に欠けたニュースメディア

トレンディング欄の操作や選挙への影響行使を図ったことはないというフェイスブックの主張は真実かもしれない。それでもギズモードの報道は、ニュースに対しフェイスブックが突きつけている危険性がさらに増していることを再認識するきっかけとなった。これを受けて米上院商業科学運輸委員会のジョン・スーン委員長(共和党)は10日、ザッカーバーグに対しフェイスブックはバイアスをどのように統制しているか尋ねる書簡を出した。

問題はフェイスブックが世界を変えるような巨大な力を持っているかどうかではない――持っているのは確かだし、その大きな力が懸念材料であるのは間違いない。もし望めば、フェイスブックは選挙に強い影響を与えようとすることも、特定の政策を後押しすることもできるだろう。ユーザーの物事に対する感じ方を操作することもできるだろう。かつて同社はインターネットで感情がいかに広がっていくかを調べる実験を行い、そのことを証明した。

現時点でフェイスブックが何か危険なことをしているという証拠はないが、危険性は本物だ。最も懸念されるのは、フェイスブックが自らの力をわかっていないと思われる点。そして企業としての倫理や責任、そして自らが偏向に陥る可能性についてきちんと自覚した報道機関だという意識もない点だ。認識不足という点では、フェイスブックの背後で動いているのはコンピューターだからバイアスとは無縁だと思い込んでいるかもしれないユーザーの側も同じだ。

そんな「公正神話」は捨てるべきだ。トレンディング欄に限らず、フェイスブックが表示するコンテンツの大半は同社のアルゴリズムによって選ばれている。だがそうしたアルゴリズムには、人間の編集判断と同じくらいバイアスが含まれている。

「アルゴリズムは編集者そのものだ」と語るのは調査会社データ&ソサエティのアナリスト、ロビン・キャプランだ。「人手こそ介してはいないが、プロセスのあらゆる段階で人が関わっている。私たちが何をクリックしているか、背後にあるアルゴリズムに手を加えているのは誰か、どういった種類のユーザーテストが行われているのかもそうだし、アルゴリズムに最初の学習用のトレーニングデータを与えたのも人間だ」

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