ただし筆者の見るところ、両方とも一過性に終わるはずであり、来年の後半には景気は再び上向くと見る。すなわち、2009年は「百年に1度の国際金融危機」、2011年は「千年に1度の災害」であったけれども、13年は「10年に1度程度の不況」ということができようか。
海外からの投資が極端に少ない日本
それでも日本経済の体質は、この間に変化していることに注意が必要だ。それは貿易収支が慢性的な赤字になっていること。原発が止まっているために、年間3兆円程度の代替燃料の輸入が響いている面は確かにある。
ただし現状の通関統計は、「輸出が65兆円、輸入が70兆円」くらいが相場観で、「日本は原料を輸入し、付加価値の高い製品を輸出する加工貿易の国」という見方が次第に該当しにくくなっている。こんな状態で、足元の「円安傾向」を喜んでいていいのだろうか、という素朴な疑問も浮かぶ。
その一方で、日本経済が直接投資や証券投資で稼いでいる所得収支は、コンスタントに年間14兆円程度の黒字になっている。GDP比で3%近くになるけれども、こんな国はめずらしい。結果として、日本の経常収支は今後もしぶとく黒字を維持するだろう。すなわち日本経済はもはや貿易立国ではなく、投資立国になりつつある。国際収支の理論でいう「成熟した債権国」になりつつあるということだ。
ところで「日本は世界最大の債権国である」とはよく言われることだが、これはネットの評価であることは意外と知られていない。グロスでいえば、アメリカなどの対外債権の方がはるかに大きい。日本は海外からの対内直接投資が極端に少ないので、日本から海外に持ち出される所得移転が少なく、それだけネットの黒字が大きくなるという構造がある。
考えてみれば、これはもったいない話である。海外企業がもっと日本で稼いでくれれば、雇用だってそれだけ増えるはずだ。海外投資家が、日本の株や債券を買ってくれることも大いに歓迎であろう。投資が双方向で行われ、対外投資と対内投資が手に手を取って増えていくというのが本来の望ましい経済運営である。外国人や外国企業がもっとこの国に来てくれるように、われわれは「内なる開国」を進めていくべきではないだろうか。
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