投資立国ニッポンを考えるジャパンカップ かんべえ(吉崎達彦)が見た日本経済

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さて、今週末はお待ちかねジャパンカップである。投資立国の日本としては、是非、外国馬に日本に来てもらい、レースを盛り上げてもらいたいものだ。高額賞金を外国勢にもっていかれるのは悔しい、などとケチなことを言うなかれ。獲って、獲られて、競い合い、世界全体の競馬を盛り上げることこそが望ましい。保護主義は成長の敵と知るべきである。

今回、来日する外国馬は5頭。常連でいえば、デインドリームは伝染病発生で移動禁止措置が取られ、スノーフェアリーは故障発生というのは寂しいが、それでも凱旋門賞を制した4歳牝馬ソレミアがいる。必勝の体勢を築いていたオルフェーヴルを、ゴール直前で差しきったシーンは忘れがたい。凱旋門賞制覇という日本の悲願を打ち砕いた敵役だが、わざわざ訪日してオルフェーヴルにその仇を討つ機会を与えてくれたことは多とせねばなるまい。

ソレミアの鞍上は、日本の馬場を知り尽くしたオリビエ・ペリエ騎手。迎え撃つオルフェーヴルは、ホームグランドということもあって池添謙一騎手が戻る。果たして両者の心境やいかに。場所を変えた日仏両雄の再決戦は見どころ満点といえるだろう。

凱旋門賞馬ソレミアのオッズに注目

ところが「ネット競馬」の予想オッズを見ると、オルフェーヴルは2.0倍で堂々の1番人気だが、ソレミアは約40倍の8番人気である 。いくらソレミアが初の海外遠征だからと言って、いくら日本の馬場への適性がわからないからと言って、この大差はないだろう。格からいえば、この2頭が断然ずば抜けているはずなのだ。凱旋門賞では、両頭は3着以下に7馬身以上の差をつけていたのだから。

今年のジャパンカップは、未完の大器ルーラーシップ、三冠牝馬の女帝候補生ジェンティルドンナ、オルフェーヴルの弟である三歳牡馬フェノーメノ、秋の天皇賞馬となったエイシンフラッシュ、いつ復活するか見当がつかないトーセンジョーダンなどが揃い、競馬ファンとしては目移りして仕方がない。が、この際、オルフェーヴルとソレミアの馬連一本で勝負してみたい。

もちろん当日はオルフェーヴルを応援する。従ってオルフェーヴル1位確定の馬単でもいいのだが、ここは投資立国・日本として「対外・対内投資一体化」を推進する手前もあり、どちらが来てもいいように柔軟に構えたい。

ただし筆者の場合、パドックでソレミアに遠征による「異変」を感じ取ったら、即座に予定を変更してオルフェーヴルからエイシンフラッシュあたりに流すかもしれない。競馬場に居るときは、意地よりも面子よりも自分のカネが大事である。この心得、ゆめゆめ忘れるではないぞと、自分自身に強く言い聞かせる不肖かんべえであった。
 

かんべえ(吉崎 達彦) 双日総合研究所チーフエコノミスト

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Kanbee

吉崎達彦/1960年富山県生まれ。双日総合研究所チーフエコノミスト。かんべえの名前で親しまれるエコノミストで、米国などを中心とする国際問題研究家でもある。一橋大学卒業後、日商岩井入社。米国ブルッキングス研究所客員研究員や、経済同友会代表幹事秘書・調査役などを経て2004年から現職。日銀第28代総裁の速水優氏の懐刀だったことは知る人ぞ知る事実。エコノミストとして活躍するかたわら、テレビ、ラジオのコメンテーターとしてわかりやすい解説には定評がある。また同氏のブログ「溜池通信」は連載500回を超え、米国や国際政治ウォッチャー、株式ストラテジストなども注目する人気サイト。著書に『溜池通信 いかにもこれが経済』(日本経済新聞出版社)、『アメリカの論理』(新潮新書)など多数。競馬での馬券戦略は、大枚をはたかず、本命から中穴を狙うのが基本。的中率はなかなかのもの。

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