福岡市の被災地支援は「自律」を徹底していた 市長が急いで公開、「赤裸々レポート」の全貌

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福岡市の高島宗一郎市長(撮影:長﨑辰一、2016年2月)

――この1カ月、高島市長は決断と行動の連続だったと思います。

最初の数日は泊りがけでした。ほとんどのスケジュールをキャンセルして地震対応にあたり、やれることは全部やったと思っています。

――共に支援にあたった職員や市民へのお気持ちは。

福岡市の職員は本当に優秀だと思いました。これまでの経験や努力が生かされ、一つひとつの支援が実現していく様子をみて、改めていい戦力を持っていた、うちのチームは強いと実感し、職員たちに惚れ直しました。

また、市民の皆さんの姿にはとても感動しました。特に急な支援物資の呼びかけにも即座に反応し口コミで拡散してくれたこと、地震直後にもかかわらず統一的に自主的に動いてくださったことに胸が熱くなりました。

――レポート公開後に反響はありましたか?

読んでくださった方々から「支援は行政だけがやるものではなく、行政と市民で一緒にやるという点についてその通りだと思った」など、大きな反響をいただいています。

また現場の職員には、支援業務に携わりながらも、一部のパーツしかわかっていない者もいました。今回のレポートで改めて全体像がわかったという声を聞き、その点もよかったと思っています。

現場では紙や電話が中心で、あまりにアナログ

――安倍総理にも直接説明されたとか。

レポートを発表した5月12日、官邸で安倍総理に直接説明する機会を得ました。SNSの活用や、平時こそ支援・受援の準備をする必要があるという話をとても熱心に聞いていただきました。

翌日、丸川環境大臣を訪ねた際には、被災地のゴミ問題を担当する課長も同席され、「福岡市が突破口を開き課題の可視化ができた」と言ってもらい、10分の訪問予定が40分になるほど具体的な話をできました。

万が一のときの体制づくりを進めるために、このレポートを活用していただければと思っています。

――今回の経験知はレポートに凝縮されていますが、特に感じたことは。

2つあります。一つは、災害対応分野でもっとテクノロジーを使えるのではということ。現場では紙や電話が使われており、あまりにアナログで驚きました。今回、ソーシャルメディアで指定避難所以外の避難所の情報をスムーズに捕捉したり、高速道路の状況をドローンで撮影したりできました。災害と付き合っていくうえで、テクノロジーは力になるし、世界に求められている技術だと思います。スタートアップに力を入れている福岡は、この防災や災害対応の分野でも貢献できると確信しました。

もう一つは、市民と一体になった体制づくりの必要性です。平時に構築し、避難訓練・支援訓練・受援訓練を一緒にやっていくことが大事。レポートに書いたように、今回得た知見を市民の皆さんにも広めていきます。

佐々木 恵美 フリーライター・エディター

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ささき えみ / Emi Sasaki

福岡市出身。九州大学教育学部を卒業後、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、国連や行政機関の報告書などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人や経営者をはじめ、様々な人たちを取材。

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