日産ゴーンがダメな三菱自動車を買う理由 不祥事が未解決でも傘下にする野心とは?

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しかし、問題の全容解明が遅々として進まない中、資本提携を急ぐことに疑問を呈する声も強い。「日産が三菱自を救済することに違和感はないが、不正問題がどこまで拡大するか読めない段階では、時期尚早で意外感がある」(ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹アナリスト)。

これに対して会見では両トップとも、「2011年の合弁設立から提携拡大を話し合っていた」と口をそろえる。

仏ルノーのトップも兼ねているゴーン社長はかねてから、「自動車業界はスケールメリットが重要」と、世界ビッグ3入りを目指してきた。

狙うは世界ビッグ3の一角

自動車業界の熾烈な競争で勝つには、環境対応や自動運転のための巨額投資が必要で、規模拡大が必須とゴーン社長は信じている。2015年の日産ルノーの世界販売台数は世界4位。三菱自を加えれば上位3社に肉薄する。国際自動車ジャーナリストの清水和夫氏は「これは手始め。ゴーン氏はルノーと同じ仏政府が筆頭株主のグループPSA(プジョーシトロエン)との連合も視野に入れているはず」と分析する。

世界一になる。三菱自の救済はゴーン社長の野望に向けた第一歩かもしれない。

                                                                                (撮影:今 祥雄)

「週刊東洋経済」5月21日号<16日発売>「ニュース最前線01」を転載)

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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宮本 夏実 東洋経済 記者

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みやもと なつみ / Natsumi Miyamoto

自動車メーカー、部品会社を担当

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