日産ゴーンがダメな三菱自動車を買う理由 不祥事が未解決でも傘下にする野心とは?

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が、4月20日以降、三菱自は当該軽の生産・販売を中止したこともあり、4月の軽販売は前年同月比の55%に激減した。今後も販売再開のメドは立っておらず、たとえ再開できたとしてもブランドイメージは毀損している。「私どもで信頼を取り戻すのは困難」(三菱自の益子修会長)だ。

さらに軽以外にも疑惑が広がったことで、国内乗用車メーカー最下位でわずか10万台の国内販売は、大幅減が確実だ。販売台数の9割以上がアジアを中心とする海外で、国内依存度は低いとはいえ、母国市場の撤退となれば、経営へのダメージは大きい。

また三菱自の生産は国内が55%を占めている。国内最大の生産拠点である水島製作所(岡山県倉敷市)は日産への供給分が大半。今後を見据えると、日産から切り捨てられるわけにはいかなかった。

軽とアジアが欲しかった日産

会見では終始ゴーン社長の強気な姿勢が目立った

日産にも三菱自を見捨てられない事情がある。一つには軽がいまや国内販売には欠かせない存在だからだ。

「デイズ」と「デイズルークス」は日産の国内販売全体の約4分の1を占める。4月の日産の軽販売は、前年同月から半減以下まで落ち込んだ。不正の影響はむしろ日産のほうが深刻ともいえる。

軽の次期モデルでは日産が開発を担当するものの、生産は引き続き三菱自の水島製作所の計画だった。軽に求められる低コスト生産のノウハウは三菱自が優れている。三菱自を見切った場合、自社で軽の生産に乗り出すか、他のパートナーを探すしかない。

もう一つが日系他社に比べて伸び悩んでいる東南アジア市場の開拓だ。

タイやインドネシアではSUV(スポーツ多目的車)「パジェロ」やピックアップトラック「トライトン」を擁する三菱自の人気は根強い。それを日産が取り込めれば、東南アジアの勢力図は一変する。

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