中国ではTwitterさえも世論操作のツール

ネットから見える反日デモの実態

9月18日の「国辱記念日」までは政府は錦の御旗である「抗日」を掲げ続ける必要がありました。その空気を読んでネット上は「抗日」一色となりましたが、ネットユーザーはそれを沈黙しながら見ていました。

そして、9月18日に政府が「もう反日デモをやめなさい」と伝えるやいなや、ネットユーザーは「もう理性愛国とつぶやいていいんだな」と判断し、自分の意見をネット上に投稿し始めたというわけです。

このように政府はやはり国民の大きな方向性をコントロールしています。ネット上で、国や地方政府に対する批判の書き込みがないわけではありません。隠語を使い、胡錦濤や温家宝は全て当て字にして、削除されないように投稿しています。しかし監視統制や「5毛党」を通したコントロールがあるため、そういった批判がネットで主流となることはありません。

中国人の本音はネットでもわからない

この状況を私は一人のビジネスパーソンとして眺め、中国のネットを日本のネットと同じ感覚でとらえてはいけないとつくづく感じています。

日本のネットは良くも悪くもほとんど無政府状態に近い。しかも、国民一人ひとりが一家言持っていて、匿名性も非常に高い。要するに何を発言してもいいのです。かなり年配の人でもネットのレッセフェール(自由放任主義)というものを容認しています。

1億2000万人の一家言持った人たちが自由に自分の意見を言える世界というのは、ある意味、ネットの究極のゴールの一つでしょう。日本人はあまりに自由な国にいます。この感覚のまま中国に行って、ソーシャリズムネットワークを見ると痛い目に遭います。

ウェイボーの何気ないつぶやきすら中国人の本音ではないし、振り返って俯瞰してみないと、何が本音だったかもわかりません。そういう意味で、ネットの特性である即時性がない。私はタイムラインに流れる情報をずっと見てはいますが、それが真なのか偽なのかを常に疑いながら見ています。

実際にデモ行進をしている人の中にも、デモが無意味であることがわかっていながら参加している人がいます。国旗を掲げ、顔にペイントして叫んでいても、デモ行進が終わったらバスでおとなしく帰り、スタバでお茶をしたりしています。日本を心底、憎んでいる人は多数派とはとても言えません。そのことを知っている私ですら、やはりネットの情報に少なからず影響されてしまいます。

9月17日まで反日デモの話題ばかり見ていると、中国に対してアンチな気持ちが芽生えてくる。それが9月18日から一転して「理性愛国」のつぶやきがドッと流れ始め、「焼き討ちをした犯人をネットで探そう」といった動きまで出てくると、中国に対して肯定的な気持ちが回復するのです。

ネットの情報は政府にコントロールされており、そのまま受け止めてはいけない、と戒めている私ですら、こうして感情が大きく揺れ動くのですから、日本にいる皆さんはテレビや新聞が報道する一面的な反日デモの様子を見て、中国に対して強い反感や恐怖を抱いていることでしょう。

しかし、実際には中国の大多数の人は冷静に反応し、国内の騒動が落ち着くことをじっと待ち望んでいます。そのことを日本のみなさんに知っていただきたいと思います。

(構成:上田真緒)

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