北朝鮮、「経済5カ年戦略」で訴えたかったこと 36年ぶりの朝鮮労働党大会で方針はどうなる

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36年ぶりの党大会に臨む金正恩第1書記。安全保障と経済の両立が課題だ(写真:ロイター/アフロ)

36年ぶりに開催された、北朝鮮の朝鮮労働党第7回大会が5月10日、5日間の会期を終えて閉幕した。最高権力者である金正恩第1書記が、「党委員長」という職位に就くことが決定するなど、人事や政策の方向性などで動きのあった大会となった。

金第1書記(党委員長)政権の基調は、ひとえに「経済建設と核武力建設の併進路線」をどう進めるか、ということだ。2016年1月の核実験や同年2月のミサイル発射など、外国からは核開発の方向にのみ関心が集まるが、今回の党大会では、「安全保障」と「経済」の2匹のウサギをどうつかまえるかという命題に、金正恩政権が継続して取り組もうとしている姿勢が窺える大会になった。

数値目標は公表しなかった

今回の党大会で金第1書記が直接報告した「事業総括」の中で、新たなキーワードが飛び出した。それは「国家経済発展5カ年戦略」(「5カ年戦略」)だ。北朝鮮もかつて立案・実行し、社会主義国では経済政策の常套手段である「5カ年計画」「7カ年計画」ではなく、なぜ「戦略」という言葉を使ったのか。

実は、「2015年秋に訪朝して経済専門家と対話した際、『国家経済発展戦略というものを2015年内に作成中』と聞いていた」と、在日コリアンで北朝鮮経済に詳しい研究者であるパク・ジェフン氏は紹介する。「その後、36年ぶりの党大会開催が公式発表されたので、国家経済発展戦略の作成もこれと同じ脈絡だったのかと思った」(パク氏)と振り返る。

金第1書記はこの5カ年戦略について、「戦略の目標は、2016年から2020年まで、人民経済全般を活性化させ、経済部門間のバランスを保障し、国の経済を持続的に発展させるための土台づくり」とし、そのためには「党の新たな併進路線(経済建設と核武力建設の併進)を堅持し、エネルギー問題を解決しながら、人民経済の先行部門(電力、石炭、金属、鉄道運輸部門)、基礎工業部門(主に機械工業)を正常軌道に乗せ、農業と軽工業生産を増やし、人民生活を決定的に向上させるべきだ」と述べている。

一方で、数値目標といった具体的内容は、公表されていない。ただ、前出のパク氏は、「事業総括での5カ年戦略の取り上げ方を考えると、すでに党・政府ではある程度浸透している戦略である一方で、(統計などを発表しない国の事情もあり)具体的な中身を対外的に発表できずにいるのではないか」と指摘する。少なくとも今年初めからは、経済運営の既定路線として認知されている戦略である可能性も高い。

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