まだ消えていないギリシャのユーロ離脱危機 景気・経済観測(欧州)

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各種の世論調査では、5月・6月の総選挙で躍進した急進左派連合(SYRIZA)が一段と支持を伸ばしている。反緊縮を掲げ、支援プログラムの即時撤回を求める同党が政権を奪取することになれば、ユーロ離脱危機の再燃は避けられない。

支援再開に漕ぎ付けた場合も、危機の先送りに注意

支援再開の決定見送りで、ギリシャの資金繰りは今後も綱渡りの状況が続くことになる。一部で政府調達の支払いが滞っているうえ、11月16日に50億ユーロ、12月中に総額61億ユーロの政府短期証券の償還を控えている。

政府は短期証券の発行増額で当面の償還費用を賄う方針だが、ギリシャの国内銀行が短期証券の一段の引き受け手となるには、ECBの協力が不可欠だ。ギリシャの銀行にとって生命線となっているECBの緊急融資制度(ELA)では、担保として受け入れ可能な政府短期証券の金額に上限が設けられている。上限のさらなる引き上げをECBが認めない限り、ギリシャの国内銀行が政府短期証券を買い増すことは期待できない。

11月20日の財務相会合で、ギリシャ支援再開が合意に達した場合、11月下旬か12月初旬の融資再開に道が開け、ギリシャの債務不履行(デフォルト)懸念やユーロ離脱危機はひとまず後退することになろう。ただ、その場合も、合意された財政の穴埋め方法が現実的で、債務の持続可能性が十分に確保されているかに注意が必要だ。

例えば、負担の分担方法を巡って利害関係者間の意見調整が平行線を辿った場合、政府短期証券の大幅な発行増額や将来の成長率の非現実的な改善に頼った資金計画を作成し、当面の市場の不安封じ込めを優先する可能性もある。こうした小手先の対応を繰り返すならば、ギリシャの財政再建はいずれ計画から逸脱することは確実で、危機が先送りされるに過ぎない。
 

 

田中 理 第一生命経済研究所 首席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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