0%台の長期金利が“異例”と言われなくなるとき 市場動向を読む(債券・金利)

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現下の利回り水準が1.0%未満とはいえ、当時よりは高いからだろうか。債券市場は戦々恐々とすることなく平静を装っている。むしろ、歴史的な低金利の長期化という厳しい資金運用環境を甘受さえし始めたようにも見える。とすると今の債券価格高は、実は、はかないバブルなどではなく、案外、理にかなっているのかもしれない。つまり、長期金利の適正レベルや理論値が趨勢的に低下してきていて、現在は足元の心理的な節目である0.80%前後に位置している可能性が見込まれるのである。

低下する期待成長率と期待インフレ率

長期金利の理論値は、一般的に、債券市場参加者が思い描く①期待成長率と②期待インフレ率、それに③リスクプレミアムという3つの要素の和でおおむね決まる。ただし残念ながら、各要素を推計して理論値を特定することはできない。市場の期待やリスクプレミアムを定量化することが事実上、不可能だからだ。そこで以下では、当該理論式を、低金利が長期化している原因を解明するためのツールとして用いる。

 長期金利の理論値は、10年5月のギリシャ債務不安を機に欧州債務危機が勃発して以降、3要素すべてに低下バイアスがかかり、構造的に下方シフトしてきたと考えられる。まず①期待成長率と②期待インフレ率は、同危機の長期化観測によって押し下げられたもようである。同危機は、欧州先進国のソブリンリスク(国家の信用リスク=国債償還可能性の低下リスク)の高まりという戦後初の異常事態だ。それだけに、市場の期待形成に与えた影響は想像以上に大きかったようだ。

 実際に即して言うと、世界的なリスクオフ・ムード(=投資資金のリスク回避志向)の蔓延を背景とする「際限ない円高基調」という思惑が、国内産業の空洞化を加速させかねないとの懸念を助長した。日本経済は待望して久しい内需主導型への構造転換を果たせず、未だに外需依存構造にとどまっていると目されるだけに、債券市場参加者の期待成長率と期待インフレ率は一段と低下してしまったと考えられる。

また、同危機の深刻化を背景に、米欧経済においても、日本型デフレ構造、すなわち慢性的な需要不足状態が長期化必至であるとの懸念が、グローバル市場で共有されるようになった。このことは、日本のみならず米欧の期待インフレ率をも抑制している。

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