0%台の長期金利が“異例”と言われなくなるとき 市場動向を読む(債券・金利)
そのために、日本ではデフレ期待が一向に払しょくされず、米欧ではディスインフレ期待が根強いのだ。ちなみに、経済協力開発機構(OECD)は来年のGDPギャップ〔対潜在GDP比〕について、日本がマイナス0.2%、米国がマイナス3.1%、ユーロ圏(12カ国)がマイナス3.9%と、いずれも5年連続の需要不足と推計している<6月時点>。
欧州債務危機が長期金利の理論値を下方屈折させた
次に③リスクプレミアムが低減していると見られる背景も、逆説的だが欧州債務危機の長期化観測と考えられる。具体的には、ソブリンリスクの収束に向けて世界的に財政再建機運が高まり、それが財政リスクプレミアム(=財政悪化リスク)をある程度相殺しているもようだ。
このことをマネーフロー面から捉えると、ソブリンリスクが比較的低いと評価された日米や北部欧州の国債市場にはリスク回避志向の投資資金が大挙流入し、財政リスクプレミアムを減殺している、というイメージだ。
また、日米独の中央銀行が非伝統的な金融緩和政策のいわゆる「時間軸」を段階的に強化し、明確化してきた。日本銀行について言えば、2010年10月に「包括的な金融緩和政策」を導入し、今年2月にはそのもとで「弾力的なインフレ目標」という政策運営の枠組みを採用して『間断ない金融緩和』(白川方明総裁)をコミットした。
一方、債券市場参加者の多くは『事実上のインフレ目標である消費者物価指数の前年比1%が達成される目途は当分立たない』と読んでいる。このような金融緩和政策運営を巡る不確実性の著しい低下が、長期金利が内包するリスクプレミアム全般を強力に抑制しているようだ。
こうしてみると、長期金利の理論値を下方屈折させた「張本人」は欧州債務危機と言えそうだ。とするなら、同危機とそれに伴うリスクオフ・ムードが長引くなか、日銀が弾力的なインフレ目標という金融政策運営の枠組みのもとで『間断ない金融緩和』をコミットしている限り、当該理論値には低下バイアスがかかり続けていくと予想される。
そして、実際の長期金利も、市場の期待やリスクプレミアムを上振れさせるサプライズが生じるまで、0%台後半という異例の低水準での滞在日数がさらに長くなってゆくのだろう。そのとき、“0%台”はもはや異例とは言われなくなっているのかもしれない。
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