現代イランが抱える「後進性」と高い「将来性」 日本は健康や環境への支援で存在感を示せ

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経済制裁終了後、イランがまず着手すべきは大気汚染からの解放だと思います。これまでも日本はJICAを通じて環境問題の支援をしてきましたが、イラン側の意識が変わらないために改善には程遠いようです。食の安全、医療分野の整備、資源開発、教育問題などのアプローチも大切ですが、まず一般の人の健康に貢献することから始めるのが、日本らしいアプローチだと信じています。

平均年齢は何と28.5歳

また、今回の訪問でもっとも違和感を持ったのは、インターネットがつながりにくいこととSNSを使うことが出来なかったことです。FacebookやTwitterなど、イランでは規制しているために使えません。

政府がすべてのメディアを検閲し、言論の自由を制限している数少ない国家のひとつがイランです。今回テヘランで泊まったのは5つ星ホテルでしたが、Wi-Fi環境はロビーだけで部屋にはまだWi-Fiが飛んでいないのです。仕事がら毎日のメールチェックは必要なので、毎朝ロビーで行わなければなりませんでした。ネット環境が遅れているのは技術的かつ経済的な問題ではなく、情報の開示を出来るだけ制限するためであることは想像に難くありません。

ネット環境を制限していることからわかるように、イランは国民に現代世界では当たり前になっている自由を制限しています。ペルシャ時代からのすばらしい伝統と文化を誇るイランが情報制限をしなければならないのは、後進性以外の何ものでもないと言わざるをえません。一般の人々がイスラム教の教えをどれだけ生活の中で実践しているのかわかりませんでしたが、普通の会話では宗教色はあまり感じませんでした。

経済制裁が解かれることで、経済面だけでなく一般的な生活に大きな変化が起こるのではないでしょうか。若いイラン人の人々と面談しましたが、平均年齢はWHOの統計で何と28.5歳(2013年統計)。世界でも有数の若者中心の国家ということになります。

また、イラン政府の高官が昨年のダボス会議で、今後5年間で毎年平均8%の経済成長見通しを報告しました。世界銀行の予測数字は最低でも5%以上ですから、いずれにしても高い成長率が期待できそうです。世界銀行は外国企業の直接投資額は年間でも2倍以上になると予測しています。制裁解除が行われると海外に凍結されているイランの凍結資産額(約17兆8500億円)の運用が可能になり、この資金がイラン国内に還流していくでしょう。国内設備の老朽化が改善されれば、経済の活性化が飛躍的に進むかもしれません。まさに目が離せない国になりそうです。

中村 繁夫 アドバンストマテリアルジャパン社長

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なかむら しげお / Shigeo Nakamura

レアメタル(希少金属)の専門商社「アドバンスト・マテリアル・ジャパン代表取締役社長。中堅商社・蝶理(現東レグループ)でレアメタルの輸入買い付けを30年間担当。2004年に日本初のレアメタル専門商社を設立。著書に『レアメタルハンター・中村繁夫のあなたの仕事を成功に導く「山師の兵法AtoZ」』(ウェッジ)、『レアメタル・パニック』(光文社ペーパーバックス)、『レアメタル超入門』(幻冬舎新書)などがある。

 

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