現代イランが抱える「後進性」と高い「将来性」 日本は健康や環境への支援で存在感を示せ

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法の抜け道を利用しながらも書類を作成し、航海上の危険を入念に調査して、最終的に英国の海上封鎖を突破して英国石油メジャーを相手に勝利をした大和魂に感銘を受けました。今年の経済制裁解除後もイランのレアメタル輸入には多くの困難がありますが、当社も日本とイランのパイプ役となって何とか取引を成功に導きたいと思います。現代の「山師と呼ばれた男」になれたら最高です。

怖いくらいの交通マナーと環境汚染

さて、25年ぶりのテヘラン訪問で見聞きしたことを紹介しましょう。バザールの喧騒やビジネスで訪れた得意先のオフィスの雰囲気も時間が止まっているような感じでした。道路を走っているのも古い自動車ばかりです。25年前は気がつかなかったのですが、交通ルールがほとんど存在しないことに恐怖を覚えました。

安全運転を心がけていないので、外国人のわれわれにしてみると、横断歩道を渡ることも決死の覚悟が必要です。一般にイラン人は紳士的な人が多いのに、こと交通事情だけは世界ワーストランキングに入ると言っても過言ではありません。交通ルールがなぜこれほど悪いのか、考えざるをえませんでした。

結論からいえば、経済制裁の影響もあってインフラが整備されていないことも背景にあるのでしょう。外国車の輸入関税は100%もしますから、一般庶民にとっては高嶺の花です。8割以上が国産車か輸入車の中古車で、仮に交通事故でぶつかってもそれほど気にする必要はないのかもしれません。道路の整備もかなり遅れています。公道でも信号がないところが多く、自動車もバイクも自由に往来し、横断歩道があってもほとんど無視状態です。一応、テヘランではバスの通り道が確保されていて公共交通手段は確保されています。ところが、歩道だろうが何だろうが、バイクが突っ込んできます。

今後、外国人の訪問が増えると予見されますが、最初から交通事情の悪さを知っておいて行動することをお勧めします。

日本が技術協力を推し進めている、テヘランの大気汚染についても触れておきましょう。今回のテヘラン滞在は一年でいちばん天気の良い時期を選んだので、気持ちの良い毎日でした。4000メートル級の山脈をきれいに見ることができましたが、残念なことがありました。それが大気汚染です。

車からの排気ガスがひどく、10分も歩くと目が痛くなってきました。光化学スモッグが発生するところまではいっていませんが、日本人の常識からいえば我慢が出来ないレベルです。中国の北京や上海と比べると、産業起因の汚染ではないので、自動車のマフラーに触媒を施せば簡単に改善できるということです。しかし、経済制裁による貿易制限のために、高性能の自動車触媒を使用する経済レベルにはありません。テヘラン市内は緑が多くて公園で楽しむ市民が多いのですが、これから車社会が進めば深刻な大気汚染が進行すると予想されます。

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