ホンダ「ヴェゼル」がSUV販売1位に立つ理由 嗜好の変化をとらえ、臨機応変な進化続ける
しかもヴェゼルはスタイリッシュだった。エクステリアは下半身がSUV、上半身がクーペという考え方はジュークと共通するものの、 それとは異なるダイナミックなフェンダーラインやウインドーグラフィックで、独自の個性を発散していた。
全長4135mmという短めの全長ゆえに、後席空間に限りがあったジュークに対し、「フィット」のプラットフォームを流用しつつ全長4295mmと余裕を持たせることで、ジュークより格上に見せるとともにファミリーユースへの適応もアピールしたこともヴェゼルの特徴だ。
ヴェゼルはインテリアも先進的だ。インパネのセンターパネルをドライバー側に傾け、センターコンソールを高めにセットした運転席環境は、国産SUVとしては珍しくスポーティな雰囲気を強調しており、明るいブラウンを用いた2トーンのコーディネートは、鮮烈なだけでなく質感も高かった。
このクラスではトップレベルのユーティリティ
それでいて燃料タンクをフィット同様前席下に置いているので、後席は低く折り畳むことが可能。荷室の床も広く、容積は定員乗車時でも約400Lとかなり広かった。ユーティリティでもこのクラスのトップレベルだった。
そしてパワートレインには、1.5Lガソリンエンジンに7速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)とモーターを組み合わせた、フィットと基本的に共通のハイブリッドシステムを投入。ホンダでは初めてハイブリッドと4WDの組み合わせも用意していた。
2014年、ヴェゼルのハイブリッド車は2・7・10月と、3回もリコールを発表した。いずれもDCT(デュアルクラッチ・トランスミッション)の不具合によるものだった。にもかかわらず好調な売り上げを記録したのは、デザイン、使い勝手、走り、価格が高度にバランスしていたからだろう。
ただし初期のヴェゼルに乗った印象は、満点ではなかった。サスペンションがかなり固く、乗り心地が悪かったからだ。開発担当者は「スポーティさを狙った」とのことだったが、ファミリーユースにも対応できるSUVとしてはミスジャッジではないかと思った。
しかしホンダはすぐに手を打った。2015年4月、乗り心地と操縦安定性を両立する「振幅感応型ダンパー」を、フロントサスペンションに加え前輪駆動車のリアにも装備すると、今年2月には4WDのリアにも採用し、全グレード適用とした。同時にハイブリッドのZグレードには、乗り心地の向上に寄与するパフォーマンスダンパーも採用している。
発売から約2年間に、乗り心地に関する改良が何度も行われたことは、この部分に不満を抱く人が多かったからだろう。そしてホンダが矢継ぎ早に改良を施せたのは、販売好調なクルマゆえ潤沢な開発予算が使えたので、それを乗り心地に充当できたのかもしれない。適切な対応だ。
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