ホンダ「ヴェゼル」がSUV販売1位に立つ理由 嗜好の変化をとらえ、臨機応変な進化続ける

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パフォーマンスダンパーを採用した仕様である「ハイブリッドZ」の最新型に乗ると、驚くほど乗り心地が快適になっていた。鋭いショックに対してもサスペンションがしっとり動き、衝撃を和らげてくれる。足回りの動きが良くなったことで、フロントの重さが気になっていたハンドリングも自然になっていた。

さらに今年2月の改良では、衝突軽減ブレーキや車線維持支援システム、誤発進抑制機能など8つの予防安全機能を盛り込んだホンダ・センシングを、全車種で選択可能とした。試乗車にも装備されており、予防安全性が高まっていた。継続的な改良によって魅力が高まっていることが確認できた。

時代を読むうまさの発揮

一方、ホンダは今年2月の改良で、走る楽しさを追求した「RS」グレードをヴェゼルに追加してもいる。このRSには、走行時の安定性に寄与する専用パフォーマンスダンパー、可変ステアリングギアレシオなどを装備し、ボディやインテリアもスポーティに装っている。

乗用車第1号車がスポーツカーで、F1レースにも参戦を続けるホンダには、スポーティなイメージを求めるユーザーが多い。ヴェゼルRSは、そういう人々に向けたグレードといえるだろう。

こうした改良や車種追加の結果、ヴェゼルの価格は発売当時のガソリン車187万〜212万円、ハイブリッド車219万〜268万円から、ガソリン車が192〜239万円、ハイブリッド車が227万〜288.6万円へと上昇している。上限の数字は2年間で20万円以上アップしている。

しかし欧州では、SUVは同クラスのハッチバックより上級車として位置付けられており、価格設定も一段上となっている。欧州ブランドがSUVを好んで手掛けるのは、収益率の高さも関係していると思われる。

この流れが日本にも波及しつつある。たとえばヴェゼルの後に登場したマツダCX-3は、237.6万〜302.4万円とヴェゼルより高めの価格だが、着実に売れている。SUVをファッションとして認識することに続き、付加価値の高い車種と認識する考えも、日本のユーザーに根付きつつあるようだ。

今年末にはトヨタが新たなる競合車「C-HR」を投入

ヴェゼルが改良によって快適性能や安全性能を向上させ、価格引き上げにかかわらず好調な販売を続けているのも、この流れに乗った結果と言える。かつてのホンダの得意技、時代を読むうまさが発揮されているような気がする。

今年末にはトヨタから新たなる競合車「C-HR」が登場予定であるなど油断は禁物だが、これからも臨機応変な進化を続けていけば、ベストセラーを続けていけるだろう。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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