55万部!「翔んで埼玉」がバカ売れした理由 30年前の復刻マンガが、なぜ爆発したのか

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話は「月曜から夜ふかし」放送の半年ほど前にさかのぼる。

宝島社で『翔んで埼玉』の編集を担当したのは、「このマンガがすごい!」編集部でムック、書籍、ウェブサイトの編集長を務める薗部真一氏だ。

同編集部では月に1度アンケートを基に「いま読むべきマンガのランキング」を発表する。この選定に参加する“選者”から2015年夏ごろ、「このマンガいまネットで盛り上がってるぜ」「これ復刊したほうがいいよ」という声が上がってきたのが『翔んで埼玉』だった。「その声はひとりや二人ではなかった」と薗部氏は振り返る。

薗部氏は以前に「TJMOOK 大人の少女マンガ手帖」というムックを通じて、魔夜氏とは交流があった。そこでさっそく魔夜氏に連絡を取る。「復刊したいと連絡を取ると、そんな作品あったっけ?ってノリで(笑)。先生は一度描いたマンガの内容は忘れているみたいですね」(薗部氏)。

しかし、問題が発生。なんと言っても30年前に出版されたマンガ。原画など残っていない。薗部氏は“原稿”を入手するためネットを探し回った。おそらく市場に出ている最後の2冊を、1冊はAmazonで、もう1冊は古書店で3000円前後で入手した。表紙のイラストも書き下ろしではなく、マンガの1コマを拡大して色をつけた。

「魔夜先生の描く線はキレイなんですよね。だから、拡大してもまったく問題ないんです」(薗部氏)。

予約だけで初版部数を超えた

そして発売1カ月ほど前に「月曜から夜ふかし」でこのマンガを紹介。まったくの偶然らしい。「企画段階での部数は2万5000部だったんです。これでも十分多いんですけどね。夜ふかしオンエア後の反響がすごくて、予約段階で2万5000部を超えてしまいました」(薗部氏)。

宝島社は地方ディスマンガばかりを収録した『このマンガがすごい!comics この「地方ディス」マンガがひどい! 』(左)も発売している

刷り部数を増やすために、発売日を5日ほど延期した。「結局20万部刷ろうという話になって。ビックリですよね(笑)。20万部刷って重版して、2月末に33万5000部、3月末時点で55万部を突破しました」(薗部氏)。

価格は700円(税抜き)。さぞや宝島社の懐を潤していることだろう。

ところで『翔んで埼玉』、実際はどんな人が買っているのだろうか。

宝島社のデータによると、『翔んで埼玉』売り上げの3割は埼玉県内。なるほど、埼玉県の人口は726万8405人(2016年4月1日現在)と都道府県別では全国で第5位を誇る。同じ“地方”でも、赤羽や群馬県とは格が違うわけだ。

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