読者は、いくらであれば有料記事を買うのか メディアが「マイクロペイメント」に熱視線

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若い読者にリーチできることはタイムにとっても魅力的だ、とタイム社のデジタルマーケティングおよび売り上げ担当シニア・バイスプレジデント、スコット・マカリスター氏は話す。タイムは、主力雑誌の「タイム」のデジタル版を1記事あたりおよそ1ドル(約107円)以下という価格設定でブレンドルのプラットフォームでテストすることにしている。「若年層がコンテンツにお金を払っていると聞いて、嬉しく思った」とマカリスター氏は言う。

だが、マイクロペイメントも、ほかの決済方法が常に抱えているのと同じ課題に直面する。無料で手に入るものがすでにたくさんあるのに、コンテンツに対して消費者にお金を払ってもらうことは難しい。クレイ・シャーキー氏は2009年のエッセイで、世間の人は「少額の負担を強いられる」ことが嫌いだという点が、このビジネスモデルの基本的な問題だ、と述べている。

ブレンドルは、ユーザーに優しいインターフェースで知られている。ユーザーはフェイスブックアカウントでログインし、どこでも1つのアカウントを再入力して複数のパブリッシャーから記事を購入できるのだ。満足できなかった場合には、払い戻しを受けることもできる。ウォールストリート・ジャーナルのようなペイウォールを実施するパブリッシャーが、自社サイトの購読者候補を見つけるのにも役立つ。

一方で、このアプローチに対する懐疑心から、別のビジネスモデルの模索に移行する企業もある。アドブロックを解除する技術をパブリッシャーに提供している新興企業ソースポイントは、購読料で収益を得たいパブリッシャーのためペイウォール製品作りに取り組んでいる。

スポティファイ型への対抗馬

もっとも、ソースポイントが長期目標として目指すところは、定額料金を支払うだけで複数のパブリッシャーのコンテンツにアクセスできるスポティファイ型サービスの構築だ。その理由は、スポティファイやネットフリックスのようなサービスを通じて、消費者はオンラインコンテンツにお金を払うことに慣れているからだ、とソースポイントの共同創設者で最高執行責任者(COO)のブライアン・ケーン氏は説明する。

マイクロペイメントはさらに、広告を見ることで対価を払うという方法を選択したい人もなかにはいるという事実を無視している。「支払いがすべてだとも思わないし、広告がすべてとも考えていない。コンテンツに対してどうやってお金を払うかは、消費者個々の選択だ」と、ケーン氏は言う。

実際のところパブリッシャーは、さまざまな方法を試して自分たちのビジネスモデルに合うものを探し出さなければならないと、ウォールストリート・ジャーナルのバネック=スミス氏は述べる。「コンテンツを無料で提供する結果、パブリッシャーがもたらしてきた損害を元に戻す簡単な解決策はない」。

Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)

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DIGIDAY[日本版]編集部

2015年9月1日にローンチした「DIGIDAY[日本版]」を運営。同サイトでは米「DIGIDAY」が日々配信する最新のデジタルマーケティング情報をいち早く翻訳して掲載するほか、日本国内の動向についてもオリジナル記事を配信している。メディアジーンが運営

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