地方を消滅させるのは、従来型エリートだ!

藤野英人×木下斉、「ヤンキーの虎」を語る

木下:商店街でも、ヤンキーの虎のような人がやっている店は、お客さんがすごく入っていますよね。ある静岡の都市でも、本当に人っ子一人いないような商店街にいった時に、商店会長も「うちの商店街は終わりだ、もうダメだ」って嘆いていましたが、そのヤンキーの虎のような人がやっている飲食店は大繁盛。しかもその街に数店舗出しているわけです。つまり彼らは営業力もずば抜けてる。

営業力の源泉は、とてもシンプルです。「来い!」って言ったら、すぐに来てくれる人たちがいるんです。

藤野:仲間ですよね。彼らの強みはそれだけじゃない。情報収集能力もあるから、東京の情報をよく仕入れている。地方に拠点を置いて、東京を頻繁に訪れて、流行っているモノを全部仕入れているんです。

一方で、昔から地元で古いビジネスをやっている人たちもいます。ヤンキーの虎ではない、土着の人たちですね。でも、彼らはFacebookのようなSNSをやらないし、ITも詳しくないし、東京の「流行り廃り」も知らない。

そういう古いビジネスをしている人たちは、ヤンキーの虎たちにだんだんシェアを奪われていくわけです。そして、虎たちはシェアを食って伸びていく。

木下:既存のビジネスをやっている人たちは、地域内ヒエラルキーで仕事がもらえて、飯が食えていたんです。別に自力で業績を伸ばしていくわけではなく、そこそこやっていれば、そこそこ収入が入ってくる。同業者同士、お互いにあまり刺激をしないようにしながら、棲み分けていた。

しかし今、地方では、どんどん商圏が統合されていっています。昔はA市の中心部でやっていれば、A市内の人がみんな来てくれていたんですが、皆が車を持ってしまうとA市とB市の商圏が統合され、地元の人たちは車でばーっと移動し、流行の店や大型ショッピングセンターに行ってしまうんです。さらに、最近ではネットまで登場し、商圏なんて概念さえ消え、皆がものを買ってしまう。地元のルールで遠く及ばなくなる時代にきたわけです。

結局、商店街もみんな利権だったわけです。地元の人がアクセスできるエリアに店を持っていたことが利権で食えてた。しかし商圏が統合されて、利権がぶっ壊されてしまった。

虎たちは、ガチで競争していこうという高い意識があるから、勉強熱心ですし、ネットワークも地域外にどんどん広げていきます。だから、地方にあって従来の人たちが「うちのまちは終わりだ」なんて言ってても、彼らは挑戦し成果をあげる。なぜならば、別に人がゼロになったわけでもなく、昔のやり方を捨てて、今の時代のやり方に合わせれば、やりようはあることを彼らは知っているわけです。そんな人たち相手に、古い店が勝てないのは当然なのです。

地方の支配階層は「ヤンキーの虎」の存在を知らない

「地方の役所は、ヤンキーの虎の存在を認識していない。だから、改革の中に彼らを位置づけることはないが、それではもったいない」

藤野:日本は超分断社会だと思うんですよ。地方も同じで、エスタブリッシュメントと、それとは真逆のヤンキーの虎とに分かれている。

地方のエスタブリッシュメントとは、役所、地方新聞社、金融機関、電力会社ですね。ヤンキーの虎とは、別に敵対しているわけじゃないんだけど、繋がらないんです。

というのは、そもそも存在するエリアが違うからです。例えば、大卒の人は大卒の人と結婚しているんで、お父さんもお母さんも、自分の嫁の両親もみんな大卒。一方で、高卒の人は両親も嫁もみんな高卒なんですよ。だから、大卒の人たちと高卒の人たちは、ほとんど繋がっていない。

ヤンキーの虎は、大体50%が大卒で、残りが高卒か中卒です。だから、大卒で地方のエスタブリッシュメントに属する人たちは、ヤンキーの虎の存在を知らない可能性が高いんです。友だちのネットワークにもいないから。

木下:おそらく中学、高校時代から優秀な路線を歩み、東京のそこそこの大学にいって地元に戻った役所の人が見れば、ヤンキーの虎は中学時代からヤバイと言われていた人が、大人になって単に居酒屋を開いただけと思っていたりします。でも、その業界の人に話を聞けば、「あの町と言えば、あの人だよね」というふうに、結構全国的に有名な人だったりするんですよね。

藤野:役所はヤンキーの虎の存在を認識していないから、改革の中に彼らを位置づけることはない。

でも、虎たちは勝手に伸びていくと思うんです。根本的には、独立独歩の精神で動く人たちだから。自由なんです。

もし、地方創生戦略の中に位置づけるのであれば、政府は「彼らと一緒に伸ばさせていただく」とか、「使わせていただく」という捉え方をする方が大事ですね。

だから、僕は彼らを適切に評価するべきだと思うんですね。ヤンキーの虎の中には、いい奴も悪い奴もいる。ピンからキリまで、本当に反グレみたいな危ない人もいるし、意外にも高い教育を受けているインテリな人もいる。いずれにしても、ちゃんと実績を上げて、地方経済を回しているんです。

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