地方を消滅させるのは、従来型エリートだ! 藤野英人×木下斉、「ヤンキーの虎」を語る

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増田寛也氏の「地方消滅」が描いた地方の未来は、果たして正しいのだろうか。「ヤンキーの虎」を著した藤野英人・レオスキャピタル社長兼CIOと、まちビジネス事業家のカリスマである木下斉氏が、地方再生に対する新しい見方を提供する
「地方経済」と聞くと、多くの人は暗くて後ろ向きなイメージを抱く。縮小の一途をたどる地方でビジネスをやっても、うまくいかないと考えるだろう。ところが、レオスキャピタルの社長兼CIO藤野英人氏は、地方で成功する経営者たちが意外にもたくさんいることに気付いたという。藤野氏は彼らを「ヤンキーの虎」と命名した。
今、地方で何が起こっているのか。地方の成功者たちにはどのような共通点があるのか。『ヤンキーの虎 -新・ジモト経済の支配者たち』を著した藤野氏が、まちビジネス事業家として活動し「都市再生・地域再生のカリスマ」として知られる木下斉氏と、地方の実状について語り合う。

『地方消滅』は、「霞が関の仕事を作る本」

藤野:2014年夏に増田寛也さん(元総務大臣、元岩手県知事)の著書『地方消滅 東京一極集中が招く人口急減』(中公新書)が刊行されて以来、「地方消滅」という言葉が話題になりました。この本は、人口減少という視点から「地方はこのままだと危ないですよ」という警告を示したものです。

しかし、増田さんの本は、マクロ経済の中で地方をどう見るかという話が中心なので、地方の現場で何が起きているかという細かい話はあまりありません。実体験に基づいた地域開発の在り方、具体的な解決策の話についてはほとんど書かれていないのです。

それでも、それは別に問題ではないんです。この本には、すごい価値がある。それは何かというと、「地方って結構やばい状況なんですよ」という健全な警鐘を鳴らしたことなんです。

増田さんの本が、地方だけではなく都市部でもたくさん読まれたことで、全国レベルで問題意識が共有化された。ここに凄まじい価値があると思っています。

その上で、では、具体的に地方はどうすればいいのかということは、木下さんや、僕のように地方を飛び回っている投資家や、各地域の経営者たちが論じればいいと思うんです。

木下:僕は、増田さんの本は、霞ヶ関の仕事をつくるためのものだと思っているんです。永田町も何らかの意図があって政策を打ち出す際、霞ヶ関が動くやすくする上で、何か社会的な建前がないと、予算を動かしにくいわけですよね。

今回のように地方政策に予算を割く際には、「地方がここまで危ないんだ」という警告を出すことが必要になるわけです。その際に今回活用されたのは「人口論」という誰にでも理解しやすい指標。これがもし、財政や金融の話から入って説明をしてしまうと複雑になってしまい、多くの国民から支持されることはありません。

しかし、人口論で「地方は人がいなくなるからヤバイ」というシンプルな図式を示すことで、誰もが「よくわかった」「それは大変だ」と納得する。

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