山の世界から見る新しい日本 新世代リーダー 山田 淳 登山ガイド

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「日本の財政は今、瀕死の状態ですが、日本の国土の7割は山なんです。それが今までは3割の平地だけで勝負してきた。この国の根幹であるモノづくり、つまり製造業は3割で勝負するということ。でも、日本の労働力の値段は上がりすぎてしまっていて、技術力は追いつかれすぎてしまっていて、もう勝てないと思う」

そこで、国土の7割をうまく活用する方法を山田さんは提案する。その方法は「林業」「地下資源」「観光」の3つ。この中の観光にこそ、日本の将来がかかり、観光の一翼を担うのが登山だと主張する。

日本には世界自然遺産が4つある。屋久島、白神山地、知床、小笠原諸島の自然をもっと“売って“いくべきだ。ひるがえって、山田さんが知る山の業界の人たちは、資本主義経済と完全に懸け離れた旧態依然とした世界にいる。山の業界自体が小さく、競争原理も働いていない。山田さんの提案に対して、「観光客が増えたら環境が悪くなるから困る」と反論する。

「観光業が盛んになったら環境が悪くなるという考え方がそもそも間違っている。環境を守らないと観光業はやっていけないんです。観光業というのは、すべての産業の中で珍しく環境と共存しないと生きていけない業種なんですよ」

山の業界そのものを変える──。険しい道のりを見据え、山田さんは自身の経験と知を結集して、その山に登ろうとしている。このガイドが案内する山の頂上からは、日本の新しい絶景が広がっているだろうか。挑戦はまだ始まったばかりだ。

(撮影:今井 康一)

 

 

上田 真緒 ライター、編集者

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うえだ まお / Mao Ueda

ビジネス誌、ビジネス書の編集者・ライター

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