山の世界から見る新しい日本

新世代リーダー 山田 淳 登山ガイド

「山を変える」ため、コンサルタントに

お客さんを毎週20人、山に連れていったとして、年間約50週だから年に1000人に登山の楽しさを伝えられるはずだった。しかし、「山田さんのおかげで登山が好きになりました」という人がだんだん増えていき、ふと気づくと、登山ファンではなく、山田ファンが増えていた。同じ人が毎週、毎月、山田さんがガイドする登山ツアーに参加するようになっていたのだ。

「登山ガイドとしては本当にありがたいことなんですが、ライフワークとしてはまずい。登山ファンを増やしたいのに、登山人口には全然、影響を与えていないじゃないかと思った」

今のように属人的にやっていても限界がある。自分がいなくても登山ファンが増えていくような仕組みを作らなければいけない。

人気登山ガイドゆえにぶつかった壁。これをきっかけにコンサルタントという道を考え始めた

そう考えたが、具体的なビジネスモデルのイメージは湧かなかった。そこでひとまず、いろいろな業界のビジネスモデルを俯瞰的に学ぶために、コンサルティング会社に入ろうと決意したのだった。また、BtoBではなく、BtoCの業界でマーケティングを学びたい。マーケティングの視点で何百万人、何千万人というお客さんを動かせる仕事、それがコンサルタントだと考えた。

7年間在籍した大学を晴れて卒業し、マッキンゼーに入社する。希望どおり、電機、消費財、薬品などBtoCの業界を担当。仕事自体はかなり面白かった。当初、3年で辞めるつもりが、目の前の仕事にのめり込むうちに3年半が過ぎていた。

「山の世界を何かしら変えようと思って学びにきたマッキンゼーで、もっと大きな仕事がしたいと思い始めるようになっていた。ミイラ取りがミイラになってしまった」

マッキンゼーから再び山へ。転身を決めたひとつの事件

ある日、山田さんの目を覚まさせる事故が起きた。09716日、北海道大雪山系トラムウシ山遭難事故である。悪天候の中、ツアーガイドを含む9人の登山者が低体温症で亡くなった。

「自分は何のためにマッキンゼーに入ったのか? こんなことをしている場合じゃない。早く山の世界に戻らないと」

本来の自分に引き戻された山田さんは、すぐに「会社を辞めます」と上司に伝えた。その時点ではまだ何のビジネスモデルもなかったが、「登山人口の増加」と「安全登山の推進」という2つのミッションに取り組むことを固く心に誓った。

次ページ訪れては去っていった登山ブーム。安全な登山を推進するには?
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