ここにはいくつか指摘するべきポイントがあります。まず、2050年に向けて人口減少、特に生産人口が減少していくことが確実な日本においてこれ以上高速鉄道が必要なのかどうか、という点。
そもそも鉄道は人口がどんどん増えていくという状況において、労働力の迅速かつ効率的な移動を可能にするというのが持ち味です。高度成長期においては、新幹線のような高速鉄道はある意味必要があったと言えますし、実際には東海道新幹線は経済活動に多大な貢献をした、と考えられています。
しかし、それ以降――つまり、人口増による経済成長が終わってしまった後に作った新幹線は何をもたらしたか? たとえば東北新幹線は1982年盛岡開業から2002年に盛岡から八戸まで延伸し、その後青森と今回のJR北海道への乗り入れとなるわけですが、その間、1982年から2015年まで新幹線のために何が起きたのか?
東京への「逆ストロー」現象が進んだ
新幹線沿線の宇都宮、郡山、仙台、盛岡、八戸、青森――新幹線のおかげで人口が急増しましたか? 新幹線のおかげで地方経済が活性化しましたか? 新幹線を全国につなげれば日本が繁栄するとか言っている大学教授がいましたが、新花巻駅に行ったことがあるのか? と私は言いたい。
新幹線で便利になった分すべて東京に「逆ストロー」されて利潤を吸い上げられる地方の姿がそこにはあるのです。
考えてもみて下さい。
私がお世話になっている東北の盛岡は、今や東京から2時間半でついてしまうのです。新幹線が通る前はそれこそ4時間くらいかかっていましたから、東京から出張するとなると確実に泊まりです。その分地元資本のホテル、旅館を始め、地元資本の「夜の街」にはかなりのお金が東京からの出張者によりもたらされたわけです。しかし、2時間半となればもうこれは日帰り圏内。東京からの人は泊まることもなく、せいぜい800円の冷麺を食べて帰ってしまいます。
一方、盛岡にも多くのリッチな人々がいます。彼らは盛岡のカワトクデパートなどで、ルイ・ヴィトンやその他ブランド物の買い物をしていたわけですが、2時間半で東京に行けるとなると――もともと新幹線代など構わない金持ちですから、大挙して銀座に行って買い物をしてしまう。デパート以外のレストランなどの産業もすべて東京に持って行かれてしまう。
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