アップル「13年ぶり減収減益」は意外に深刻だ 再浮上への手はすでに打っているが…

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縮小

アップルは、サービスの売り上げを伸ばす道筋を作ることに成功した。これがうまくいけば、ハードウェアに大きく依存しているビジネス構造を切り替え、経済状況による変動を小さくすることができるわけだ。そこで、少しでも台数を伸ばすために売り出したのがiPhone SEなのである。

アップルによると、3月31日に発売された戦略商品であるiPhone SEとiPad Pro 9.7インチモデルの数字は、今回の1-3月期決算には反映されていないという。つまり、7月に発表される予定の来期の決算まで、その効果は計れない、ということだ。

裏を返せば、3カ月間の猶予が与えられているということだ。その点では、iPad Proの9.7インチモデルも重要だ。下落トレンドが止まらないiPadの販売台数を底打ちさせることができるだろうか。

iPad Proに課せられた新しい役割と必要な戦略

iPad Proの9.7インチモデルは、オリジナルのiPadのサイズを維持して、より高品質のディスプレイ、4スピーカー、コンパクトなカバー一体型のキーボード、Apple Pencil対応としながら、「パソコンの代替」という新たな役割を明確に打ち出した製品だ。

ただし、32ギガバイト(GB)の容量を搭載するiPad Proの599ドルという価格と、追加しなければならない169ドルのSmart Keyboardを合計すると、768ドルになる。グラフィックスも処理能力も非常に高い性能があるとはいえ、12インチ程度のWindowsノートパソコンが300ドル程度で手に入ることを考えると、高すぎる選択肢となってしまう。

その裏で、iPad Air 2は、16GBモデルを399ドル、64GBモデルを499ドルにそれぞれ値下げした。Smart Keyboardは利用できないが、こちらは価格競争力が高まった。

つまり、iPad Proだけでなく、iPad Air 2と合わせて、パソコンからの代替を狙っていくことができるかがカギだ。ウェブ、メール、文書作成、SNSなど基本的な用途についてはすでに使い勝手のいいアプリが用意されている。

あとは人々が持っている「パソコンでなければできないことが多い」という意識を解き、タブレットの魅力を納得してもらうことが課題になる。ここには、製品力ではない、マーケティング上の戦略が必要になるだろう。

アップルは良い製品を作ること(だけ)でユーザーの信頼を勝ち取ってきた。しかし、そのフェイズの終焉を決定づけることになったのが、今回の決算だろう。複雑な市場環境に対応するためには、より高度な戦略が必要になっているのだ。

すでに手は打っている。しかし、方向転換は簡単ではない。継続的な縮小に向かうのか、それとも事態を好転できるのかを判断するのは、次の決算ということになりそうだ。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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