日本を「貧困大国」にさせないための処方箋 教育、雇用、住宅の自助努力はもう限界だ

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今野:それなのに、日本は、これからもっと学費を上げると言ってるわけでしょう。そうなれば、地方の子どもはなおさら都心の大学に行かなくなりますよ。本当だったら東大、京大へ行ってiPS細胞を発見するような人間が、自分の家の近くの公立大学に行って、地方の公務員に落ち着いてしまうんです。

そうならないように、ある一定の大学は、学費を無料にするとか、低収入の世帯の学生には生活費を補助するとか、勉強したい子がおカネの心配をせずに勉強できる環境を作らなければ、「エリート」の再生産すらできません。

手に職があるかないかで、その後の選択肢が全然違う

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藤田:大学改革もずっと議論されていることだけど、貧困の現場、雇用劣化の現場を見ている側からいえば、職業訓練的な大学や学校をもっと整備していくべきです。手に職があるかないかで、その後の選択肢が全然違ってきますから。

今野:その場合、劣悪な職業訓練にならないようにしないといけない。ともすれば、現在の失業者向けの職業訓練みたいに、貧困ビジネス化しかねないですからね。やっぱり「権利としての職業訓練」、手に職をつける権利が国民に保障されていると考えて改革していかないと。そうした意味では、エリートの奨学制度だけでは全然だめで(それすらやっていないのは本当に異常なのですが)、手に職をつけるための全般的な教育保障が必要です。

藤田:介護や福祉のように、人手不足の分野はわかっているんです。だったら、単に資格を取らせるだけじゃなくて、その後の雇用も安定するように国が手当てをすることも必要でしょうね。

今野:今は、教育、雇用、住宅のいずれも自助努力でしょう。それで経済成長や少子化対策なんてできるはずがない。日本を貧困大国にしたくなければ、国家が保障しなければいけない領域をもっと広げていかなければいけないんです。

(構成:斎藤 哲也、撮影:風間 仁一郎)

東洋経済オンライン編集部

ベテランから若手まで個性的な部員がそろう編集部。編集作業が中心だが、もちろん取材もこなします(画像はイメージです)

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