日本を「貧困大国」にさせないための処方箋 教育、雇用、住宅の自助努力はもう限界だ
藤田:騙されても、証拠があれば取り戻せる、と。
家族を守るために家族が一丸となって立ち向かう
今野:そう。だってそれができるかどうかに、家族の運命がかかっているんですよ。2年間の差額請求って、何百万円というものすごい額になります。それだけあれば、新しい資格を取るための元手にもなるし、当座の生活資金にもなる。
うつ病になったとしても、治療代に充てられる。労働災害が認められれば、そもそも治療費は全額無料になります。お父さんの助言で、子どもが差額の賃金を取り戻せたら、「お父さん、ありがとう」と感謝されて、もしかすると逆に援助してもらえるかもしれません。子供が鬱になって何年も引きこもって面倒を見なければならない事態を考えれば、天と地ほどの差でしょう。
詐欺企業からおカネを取り戻すノウハウはすべて、『求人詐欺』(幻冬舎)という本で具体的に書きました。家族を守るために、ぜひ活用してほしいと思っています。ブラック企業や詐欺企業に対し、家族が一丸となって立ち向かう。とても合理的なシナリオです。
藤田:実際、それができないから、息子や娘の面倒を見ることになり、家族全体が沈没するケースが後を絶たないんです。私のNPOに相談にくる人も、家族での相談が多くなっています。親御さん夫婦と、30代、40代の息子さん、娘さんですね。子供が引きこもったり、うつ病になったりしているんだけど、親の年金だけでは生活していけない。
今野:その場合、どういう選択肢がありえますか。
藤田:家族が共倒れにならないためには、世帯分離をして、子供には生活保護を受給してもらうなり、生活困窮者の支援を受けてもらうなりという選択がいいんじゃないでしょうか。ただ、それができても支援メニューは脆弱だし、職業訓練の制度も十分じゃない。だから、生活保護をずっと受けるようなことになりがちです。
しかも、若くして生活保護に入ると、「あんなに若いのに、なぜ生活保護に入るんだ」と周囲から非難されてしまうわけで、もう八方塞がりなんですよ。その意味で、今野さんの『求人詐欺』を読んで、差額の賃金を取り戻せるかどうかで、家族の将来は大きく変わってくるでしょうね。