子供たちに大災害をどう伝えたらいいのか 参考になる米ダギーセンターでの取り組み

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ダギーセンターの代表を長年務めたドナ・シャーマンさんは、「深刻なグリーフを経験した子供には、高いレベルでの抑うつ・事故や健康の問題・学校でのトラブル・顕著な不安感情・自己肯定感の低下・無力感・悲観的なものの見方といった7つの特徴に注意が必要だ」としている。そして今回の震災における子供の心のケアについては、彼女のコラム 「talking with children about tragic events」 がヒントになるかもしれない。その中からいくつか紹介しよう。

”大人の不安や恐怖がそのまま子供に当てはまると思わないこと。彼らは周囲の大人から状況を理解する”

私たちが悲しみや恐怖、当惑などの感情を素直に表現することは、子供たちが「そうして感じても、表現してもいいんだ」と思える材料となる。子供には大人のよきモデルが必要だ。部屋で一人泣き、悲しみを子供に見せない大人に対し、子供は悲しみの共有を拒否されたと感じてしまうし、逆に大人があまり感情的になりすぎると、子供たちは大人を気遣い、親の役割を意識しなければならなくなってしまう。大人は信頼できる友人と助け合い、健康的な食生活を意識しながら自身のセルフケアを心がけよう。

大人は事実を隠さないことが大切

“繰り返し流される報道に近づけすぎないようにする”

悲惨な報道は、子供たちの恐怖心を必要以上にかき立てる。たとえば、9.11アメリカ同時多発テロ事件の映像を繰り返し見ていた子供たちの中には、この悲劇が何度も行われていた、と思っていた子がいた。またこうした映像が脳裏に焼き付いて離れず、心身に変調をきたす子供もいる。繰り返される報道に大人が夢中になりすぎないことも大事だ。

“悲惨な出来事から子供たちを完全に隔離するのは不可能であることを理解する”

家の中でテレビをつけないようにして、情報から遠ざけようとしても、子供は別の子供から状況を聞かされてしまうこともある。でも子供たちは必要以上に知りたいとも思っていない。話したい時、聞きたい時にそれができるように心がける。何より大人が事実を隠さないことがとても大切だ。たとえば「今日、お友達と〇〇について、話したりした?」と促してみる。そのことについて自由に話してもいい雰囲気を心がける。

“大人が正直に話すお手本となり、子供が何でも話せるための信頼関係を築く”

9.11事件の8日後、ニューヨークの保育園スタッフとこの出来事についての子供へのケアについて話す機会があった。ある男性が7歳の娘について「9.11の翌日から腹痛と睡眠トラブルを訴えているが、自宅にはテレビがないので9.11が原因とは考えにくい」と相談してきたが、実は彼自身がなぜ、9.11事件が起きたかについて、娘に説明をしたくないとの思いがあったことがわかった。娘は父親のそうした心情を敏感に察して、自分の恐怖や不安を話すことが出来なくなり、体調不良の訴えとしていたのだった。

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