今回のイラン訪問ではテヘランを中心に合計9社を訪問しましたが、行く先々で「あなたはいくらの投資をしてくれるのか」とか「融資をするなら他社に負けないように早く決断した方が良いですよ」とか「このようなチャンスは二度と来ないですからね」などと急かされて困りました。
経済制裁が10年も続いて貿易のインフラが整備していないのにすぐに投資や融資というのも拙速な印象があるので、まずは様子を確認してから次のステップに行くのが通常の考え方です。それでも日本の大手商社はテヘランの日本人駐在員を増員し前のめりに動き始めていました。
日本政府は新たな投資支援の枠組みを決定
だからと言って、無理をして急げば米国の通貨当局から制裁金が課される危険もあり、注意しなければならないことは言うまでもありません。報道によると、日本最大のメガバンクは経済制裁違反をめぐり米国当局に和解金を数百億円払っています。だから日本政府が前向きでも、金融機関の対応が注意深くなるのは当然のことです。フランスのパリバ銀行などは信じられないことに、なんと1200億円以上の制裁金を払わされているとのことでした。アメリカは経済制裁の本尊ですから、イラン取引が本格的になるのにはしばらくかかりますが、欧州企業はすでに本格的にスタートしたようです。
今回はイランの帰途にシンガポールの資源メジャーを訪問しましたが、彼らは石油取引でシンガポールのDBS銀行からドイツ銀行のロンドン支店にユーロとUAE通貨のディルハムを介在させて決済を成功させたと聞きました。シンガポールの国際市場はやはり動きが早いですね。それにしてもドイツ銀行が積極的な動きをしているのを聞いて少し意外な気がしました。
日本政府はイランとの投資協定に加え4月には新たな投資支援の枠組みを決定しました。NEXI(日本貿易保険)とJBIC(国際協力銀行)が総額100億ドルの資金援助を約束しました。米国の大統領選挙の動向次第では一気にイラン投資案件が動き出す可能性もあるのでこれから先を注視する必要があります。
まさにイラン経済は、新たな段階を迎えて世界に開かれていく環境が整ってきました。日本にとっては石油取引だけではなく多くの交流のある大切な国家です。次回のコラムでは、過去のイランとの関係を振り返りながら最新のイラン人の生活ぶりを中心に報告させていただきたいと思います。
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