KDDI電磁波裁判、退けられた住民の訴え 「健康被害」の存在は認定

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KDDI電磁波裁判、退けられた住民の訴え

電磁波による健康被害を受けたとして、KDDIの携帯電話基地局の周辺に住む住民がKDDIの操業停止を求めていた宮崎県延岡市大貫町の訴訟で、宮崎地裁延岡支部は10月17日、健康被害と基地局の因果関係を否定し原告側の請求を棄却した。

携帯電話の基地局からは端末との交信で24時間電磁波が発せられており、その電磁波が身体に影響を与えたとして、2010年に基地局が建つ3階建てのマンション近くの住民30人が原告団を結成。住民が行った健康調査では大貫町では原告団以外にも基地局設置後の健康状態の悪化を訴える住民が200人以上いる。

健康被害の争点は全国初

「健康被害のおそれ」を理由にして携帯電話基地局の操業停止や建設中止を求める裁判はこれまで全国各地で起こされていたが、具体的な「健康被害の訴え」を争点にした裁判は全国で初。全国的に基地局建設の反対運動が巻き起こるなど不安が高まるなかで判決に注目が集まっていたが、住民の主張ははねのけられた。

原告団長の税理士、岡田澄太さん(64)は判決後の記者会見で「2006年10月の基地局建設以降、深刻な被害が起きマンションの権利者や延岡市長、通信業界の監督官庁である総務省に訴えたが聞き入れられず、裁判にすがるしかなかった。一縷の望みを託した司法が暴論を並べ請求を棄却したと受け止めている」と厳しい表情で今回の判決を強く非難。「このままでは納得できない」と控訴する意向を示している。

岡田さんは、妻の洋子さん(60)と同様に終日にわたって「キーン」という金属音のような耳鳴り、しびれ、重い肩こりなどを併発。基地局から離れて生活するため、自宅から6キロ離れた場所への引っ越しを余儀なくされた。

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