KDDI電磁波裁判、退けられた住民の訴え 「健康被害」の存在は認定
今回の判決ではこれまで指摘された様々な問題点への言及もされなかった。
「死にたいほど辛い」 壊れされた日常生活
「原告の請求を棄却する」。今回の判決で裁判長はわずか10秒で法廷を去っていった。原告の西田雅男さん(69)は「死にたいと思うほど辛い。我々の苦しみを100分の1でも汲んでくれる判決を望んでいたのに全く届かなかった」と失望を隠さない。
基地局が建つマンションの向かいに住む西田さんは、キーンと耳をつんざくような耳鳴りと不眠に苦しみ、毎日睡眠薬を服用している。それでも眠れるのは毎日2時間程度だ。体調悪化は深刻で仕事をできる時間はわずか1時間。自宅で横になる時間は増えるいっぽうだ。耳鳴りが強いときには耳かきを耳に入れ鼓膜を刺激するという。「引っ越したいけれど年金暮らしでは難しい。いつまで戦えばいいのですか」と訴える。
引っ越しが叶わないのは西田さんだけではない。マンションの真横で保険代理店を営む甲斐章洋さん(54)も、両肩におもりがのしかかるような肩こり、耳鳴りや不眠など重い症状が続く。週に3日は自宅から離れた場所で過ごし、なんとか働き続けている。引っ越しを決断したこともあった。
しかし、「大貫町の話は知れ渡っている。担保にはできない」と地元の金融機関は融資を拒否。現在は電磁波を遮蔽する効果があるアルミ板を事務所の壁に張り巡らせて生活している。甲斐さんのように職場が基地局と近いケースでは従業員の確保にも苦しんでいる。
甲斐さんの店からも貴重な戦力だった男性職員が体調悪化を理由に職場を去った。「携帯電話は幸せな生活をするためのひとつの道具に過ぎないはず。私たちの健康や安心できる生活よりも、経済的な視点を重視し訴えを棄却した司法には裏切られたという思いしかない」(甲斐さん)。