「おもてなし」が観光政策から姿を消した理由 さらに進化する「アベノミクス最大の成果」

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画期的なのはそれだけではありません。それが2番目の理由である「旅行消費額」です。

理由2 人数だけでなく「消費額」が示された

これまで政府が出す「観光」に関する目標で、このように明確な消費額の数値目標が示されたことはありません。さらに特筆すべきは、8兆円→15兆円という、観光客数を上回る成長率を目指していることから、「観光客ひとりあたりの単価」を上げていく戦略が読み取れることです。これは中国の中間層・富裕層をこれまで以上に積極的に呼び込むことはもちろん、現時点ではほとんど来日していない、欧州などの遠方からやってくる中間層・富裕層、長期滞在客なども視野に入れていることのあらわれです。

このような発想の転換も、日本の観光行政が次のフェーズに変化していて、どんどんレベルアップしている証拠です。それが出てきたということは、いよいよ日本という国が「観光で稼ぐ」ことに対して本気になってきたのではないかと大いに期待できるのです。

明らかにこれまでとは違うことが始まろうとしている――それは「目標」だけではなく、ビジョンを実現するための施策にも顕著にあらわれています。

それが3つ目の理由です。ある意味で、私はこれが一番衝撃を受けました。

理由3 目標から「おもてなし」の文字が消えた

「ビジョン」の中にある『「観光先進国」への「3つの視点」と「10の改革」』を見ていただくと、さまざまなことが書いてあります。

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日本の観光政策では必ず登場していた「おもてなし」の文字が消えた(出所:観光庁ホームページ

これまでは外国人観光客はおろか、日本人ですらあまり立ち入ることができなかった赤坂や京都の迎賓館を大胆に公開・開放したり、自然保護がメインだった「国立公園」を体験・活用型の空間にするなどさまざまな「規制緩和」がなされていますが、そんな中、あることに気づくはずです。

ここには、数年前から日本の観光ビジョンに必ず盛りこまれていた「ある言葉」がありません。「外国人観光客」を語る文脈では必ずといっていいほど登場していたあの言葉。そう、「おもてなし」です。

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