「おもてなし」が観光政策から姿を消した理由 さらに進化する「アベノミクス最大の成果」

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「おもてなし」について、私はかねてから観光の支持要因であっても、決定要因ではないことを指摘させていただいております(参考:「英国人、『おもてなし至上主義』日本に違和感」)。

これまでの著書のなかでも、私は「観光」というのは「多様性」がもっとも大事だと訴えてきました。ひとくちに外国人観光客といっても、国籍も違えば年齢も収入も違う、日本にやってくる目的もバラバラです。同じ人間であっても、2週間も滞在していれば、ずっと同じような観光をしていることもありません。そのような幅広いニーズに応える、細かい施策が必要なのです。

日本の魅力は「あるもの」ではなく「磨くもの」

これまでの日本の観光戦略は、「おもてなし」や「クールジャパン」など、日本の良さを見つけて、それを世界に発信さえすれば、観光客が訪れてくれるという考え方が多く見られました。

それらは、外国人の多くが、新幹線の清掃チームの手際の良さを表した「7分の奇跡」に象徴される「おもてなし」や、「桜」などの日本の伝統美を好むはずだと考えてつくられた面もあったと思います。

私はこのような「発信」というのは、外国人のニーズをしっかりと分析をして、その観光資源の魅力を磨いたうえで行うべきだと考えてきました。それはあくまで観光を「ビジネス」としてとらえているからです。

「明日の日本を支える観光ビジョン」の中にある「文化財を保存優先から観光客目線での理解促進、そして活用へ」「国立公園を世界水準のナショナルパークへ」という具体的な施策が象徴するように、日本の観光戦略は、資源の魅力を磨いてから発信をするという戦略へと大きく舵を切りました。

このような発想の大きな転換こそが、「明日の日本を支える観光ビジョン」の意味することなのです。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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