iPhone5で不安増すソフトバンクの電波不足
ソフトバンクが顧客流出の防止に力を入れる理由はほかにもある。LTEは3Gより電波の利用効率が3倍よくなる。にもかかわらず、ソフトバンクの場合は、弱点といわれる電波のつながりにくさがすぐに解消されるわけではないからだ。同社は現在携帯電話の主流である3Gのメイン回線として2ギガヘルツ帯の電波を利用している。実は、アイフォーン5で利用できるLTEの周波数帯は、日本では2ギガヘルツ帯だけ。ソフトバンクは現状でさえ混雑している2ギガヘルツ帯の中から、新たにLTE用の帯域を捻出しなければならない。
プラチナバンドが使えない
ソフトバンクは今年7月からつながりやすいといわれる900メガヘルツ帯のプラチナバンドをようやく利用できるようになった。が、この帯域は設備投資を進めている途中でカバーしている範囲が狭いうえ、アイフォーン5のLTEサービスには使えない。当面は電波のやり繰りで苦しい状況が続く。一方、KDDIは3Gのメイン回線にプラチナバンドの800メガヘルツ帯の電波を使っており、2ギガヘルツ帯に余裕がある。
ソフトバンクが携帯業界に参入して6年経つが、プラチナバンド獲得の遅れが今も足かせとなっている。
孫社長は「プラチナバンドとLTE対応は同時進行で進めている」と強調するが、プラチナバンドの整備が完了するのは15年以降。2ギガヘルツ帯と900メガヘルツ帯を効率よく使えるようになるまでには時間がかかるとみられる。
アイフォーン5の予約段階では、ソフトバンク、KDDIとも前年に発売した4Sをしのぐ予約数になっている。販売台数が増えれば、通信量が増え、回線は逼迫する。回線の逼迫懸念から見送っていたテザリングをするとなればなおさらだ。
電波にボトルネックのあるソフトバンクの綱渡りは当面続きそうだ。
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(麻田真衣 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2012年9月29日特大号)
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