セブン会長が辞任前にぶちまけていた「本音」 「明日どうなるかもわからない、人間なんて」

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──サード・ポイントはグループから不振のヨーカ堂を切り離すべきだと主張しています。

株主として、そのほうが自分の持っている株の価値が上がるんじゃないかということであって、われわれはそういうふうなことは考えていない。向こうは向こうとしての考え方であって、彼らは実際にこの会社を経営しているわけじゃないから。

──そのとおりにやってもうまくいかない?

うまくいくか、いかないかは知らない。それは評論家がいろいろ言うことであってね……。株価からいえば、ヨーカ堂というか、要するに経費増のところより、セブンイレブンのほうが効率はいいから、セブンイレブンを中心にして優良会社だけまとめれば、そのほうが株価は上がる。それは理屈上そうだよ、いいところだけ切り取ればさ。そういうことを無視するわけじゃないけれども、気にしてばっかりいたら、自分たちの経営なんかできないよね。

そもそもファンドがいろいろ手を出して、成功しているものもあれば、失敗しているものもある。全部成功しているわけじゃないから。

僕が後継者を決めなくちゃいけない理由はない

4月7日の会見での鈴木敏文会長(撮影:尾形文繁)

──鈴木会長が経営全般に目配りできるうちに、後継者を決めておくという選択肢はありませんか。

人材は育ってもらわなければ困る。ただ、今回のヨーカ堂だって、すぐ実際的な効果を上げられる亀井君が、スーッと出てきた。これを「人材がいない」と、なぜ言うのか。若い人が出てくれば「人材がいる」ということなのか。それぞれの会社に、それぞれの生き方があるわけ。どこのやり方がまずいとか、いいとかはない。

たとえば、資生堂の魚谷雅彦社長は昔からよく知っている。彼は化粧品業界では素人だが、今は立派な経営をしている。スカウト人事で、あれだけ歴史のある会社に入ってやっている。そうすると資生堂が「ダメだった」とか「よかった」とか誰も言えないでしょ。スカウトしたということが立派なのであって、人材がいたか、いないかなんてことは、二の次、三の次の問題なの。

──セブン&アイ・HDについても、外部からの人材登用はあると。

それでもいいでしょう。すなわち万人が適任者だ、というふうな考え方をすればいい。僕が後継者を決めなくちゃいけない理由もない。

──会長自身が年齢に関係なく、経営できるのであれば続ける、という選択肢もありますか。

だけど僕も、いつまでもやっているのはしんどいもんな。本当は顧問でも何でもやっていたらそのほうが気楽だよね。でも、そんなことは考えない。だって明日どうなるかもわからない、人間なんて。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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堀川 美行 東洋経済 記者

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ほりかわ よしゆき / Yoshiyuki Horikawa

『週刊東洋経済』副編集長

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