中国企業がバングラデシュに生産拠点を移す時代に!--アジア進出企業の前に立ちはだかる壁
--人件費を上げなければ、不満が爆発するということですね。
国や企業によってストライキの要因は違いますが、原理は同じです。実際、この会社があるチッタゴンでは、しばしば暴動が発生しています。前掲の会社では発生していませんが、こうした新興国の二次請け、三次請けともなると、かなりキツい環境で働いています。
もちろん発注する側も、生産委託の際に相手側に求めるコードオブコンダクト(行動規範)があり、これを順守するよう求めています。ファストファッションのサプライチェーンも以前のように「安くて、まあまあ、であれば、委託先は何処でも良い」という時代でもなくなりました。
「安い人件費でこき使っている」というネガティブイメージはブランドを傷つけます。一昔前は、こうした「下請け工場での劣悪な労働環境」や「児童労働」などが人権団体によって告発され、マスコミで叩かれたり、問題になりました。発注する側から見れば、委託先の労働環境までカバーできないのが、現実だったわけですが、今は相当に気を使っています。人権に対する厳しい目やコンプライアンスの向上は、もちろん良いことですが、これらもまた賃金上昇に拍車をかけていることも事実です。
企業のグローバル戦略を日本からみると、どうしても「日本と新興国」、「先進国と新興国」という軸で物事を見がちなのですが、実際は新興国間で企業が生産シフトしたり、相互参入しています。
「外資系企業の中国脱出」が注目されていましたが、現在はさらに複雑です。VANCLという中国企業がありますが、いわば「中国版ユニクロ」のような同社がバングラデシュに進出し、話題になっています。中国の繊維メーカー自らが、中国での生産から、バングラデシュにシフトしていると言うのが今の状況です。こうした目まぐるしい状況変化の一つが、賃金ということかもしれません。