中国企業がバングラデシュに生産拠点を移す時代に!--アジア進出企業の前に立ちはだかる壁
日系企業にとってアジア進出は、リーマンショック以降、避けられない大命題となり、現在もその流れは続いている。アジアへ飛び出す日本企業は多いが、その前に立ちはだかるのは、止まらないアジアの賃金上昇だ。
日本企業が知っておくべきアジアの賃金動向について、アジア新興国ビジネスに詳しい株式会社ネクストマーケット・リサーチの須貝信一氏に聞いた。
--アジア全域で賃金が上昇しているのでしょうか?
「アジア全体でインフレによる賃金上昇圧力があった昨年」と「今年」との違いは、「政府が動いている」ということです。つまり政府による「最低賃金引き上げ」が各国で起きており企業は対応に迫れられているということです。
タイ政府は4月から、バンコク及び首都圏エリアで最低賃金を4割引き上げて、日額300バーツとしました。インラック首相の選挙公約で、かねてから予定されていたもので、「人気取り」とも批判されましたが、月額換算で190ドルの水準は北京や上海に迫る水準です。
マレーシア政府は(小売の販売員など特定業種を除いて)最低賃金制度がないというアジアでも珍しい国で、同国進出材料として一つの”売り”になっていました。しかし、今年3月、法定最低賃金の導入が決まり、来年1月(従業員5人以下は7月)から施行されることになりました。現地経営者も最低賃金法自体は必要なものと理解していますが、月額800~900リンギットという数字が妥当かどうかは意見が分かれているところです。
ベトナム政府も25~38%の最低賃金引き上げを検討しており、10月には確定する見通しです。ベトナムは、最低賃金を毎年1月に引き上げており、昨年2回引き上げた影響で今年1月の引き上げがなく、その分来年1月に一気に引き上げることになります。