「カシオペア」は親子旅向け利用で再出発を! 北海道新幹線の開業で運行終了したが…

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最前部、12号車は電源車を兼ねた展望ラウンジだ。「カシオペア」は個室内で過ごす人が多いので、10年前に乗車した時は終始静かな雰囲気だったが、この日はさすがに賑わっている。青森~函館間では進行方向が逆になり、最後尾となるため、早朝の青函トンネル通過時には多くの人が詰めかけてカメラを構えた。それでもギスギスした雰囲気は全くなく、お互いに譲り合って撮影していたのが印象的だ。

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11時15分、札幌駅に到着した「カシオペア」。ラストランの際にはここは立入禁止となり、この時が先頭車両を撮影する最後のチャンスだった(撮影:村上悠太)

朝、室蘭本線を走る頃にはラウンジは乗客同士の交流の場となる。一晩同じ列車で過ごしたという意識が、仲間意識を生むのだろう。ここでも家族連れが多い。

ディーゼルエンジンがうなりを上げるDD51型ディーゼル機関車を間近に見られて、子どもたちは大喜びだ。ややはしゃぎすぎる子どもも見受けられたが、「余所の人が大勢いる場所」で過ごす機会が、今の子どもには少ないからかもしれない。

親子の旅が楽しめる寝台列車を

「豪華個室寝台列車」としては、中途半端さが目立つようになってしまった「カシオペア」だが、親子連れの旅には最適だ。小さい子ども連れなら、狭くても個室にトイレがあるというのは大きな魅力だし、ラウンジやダイニングで過ごす時間や車掌さんとの交流は、貴重な社会勉強の場にもなるだろう。

「ななつ星」のような、最上級のクルーズ列車も魅力的だが、「カシオペア」のように家族で乗れて、限られた空間で多くの人に出会える列車が、もう少しあっても良いように思う。

「カシオペア」は6月からクルーズ列車としての運行を開始する予定だ。「カシオペア」のクルーズ運行はこれまでにも実績があり、一流温泉旅館の宿泊や有名シェフによる料理なども含め、一人27万~60万円という料金設定だった。

だが、「TRAIN SUITE 四季島」が登場すると、そうした最上級のクルーズ列車として運行するのは難しいだろう。といって、E26系客車は車齢が若く、まだまだ廃車にするような状況ではない。

そこで、期待したいのがファミリー向けのツアー列車としての運行だ。”電車”が好きな親子に、東日本をぐるりと一周する水入らずの旅を楽しんでもらい、鉄道旅の魅力を伝えていく。途中、沿線の人々が乗車して展望ラウンジなどでイベントを開催しても面白い。

一晩ゆったりと過ごしているだけで見知らぬ土地に連れて行ってくれる寝台列車の魅力を、裕福な人々だけのものにしてはいけない。それは、「カシオペア」の今後にかかっていると言えるだろう。

栗原 景 ジャーナリスト

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くりはら・かげり / Kageri Kurihara

1971年東京生まれ。出版社勤務を経て2001年独立。旅と鉄道、韓国をテーマに取材・執筆。著書に『新幹線の車窓から~東海道新幹線編』(メディアファクトリー)、『国鉄時代の貨物列車を知ろう』(実業之日本社)等。

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