美根:李明博大統領も、野田首相に慰安婦問題の解決を時間かけて頼んだのですが、動かなかった。法的には日本のポジションははっきりしていて動かないんです。1965年の日韓基本条約の請求権協定で、「将来のことも解決したことにしましょう」と言う明確な合意があります。李さんは政治的に決断すればできるはずと言っていましたが、できなかったので竹島に上陸した。彼も残念ながら後半に反日になってしまいました。
木本:そういう経緯もあったのですね。
朴槿恵大統領はなぜ親日になったのか
美根:ですが、今の朴槿恵さんは逆で、最初は原理主義で「こうしなさい、ああしなさい」と言っていたが、後半は日本に協力的になってきた。これは注目していいと思います。今年の3.1演説でも「日本との関係を協力してやっていこう」という雰囲気を示していました。去年までとはまったく違っていました。
木本:韓国の変化のきっかけにはTPPの影響があるとも聞きました。朴槿恵さんの感情の変化ではなく、経済界の圧力で変化がもたらされた側面もあるのでしょうか。
美根:その側面もあるでしょう。経済界は明らかに日本との関係を早く修復したいという意識でした。日本は2008年のリーマンショック後のウォンの危機の時には通貨スワップ協定の枠を増やして、韓国を助けました。ですが従軍慰安婦問題を巡って生じた緊張関係のため、スワップ協定の期限延長をせず、昨年末に失効してしまった。そんなこともあり、韓国経済界は原理原則にこだわる朴大統領に、かなり圧力をかけたと思われます。加えてアメリカとの関係も密接に繋がってきます。アメリカはTPPを進めたい意向が強いですが、韓国はまだ加わっていない。オバマ大統領は韓国に対し「TPPに入りなさい」といつも要請しています。米韓はすでに自由貿易協定を結んでいるので、なぜ入らないのかが、アメリカには理解できないのでしょう。
木本:そうなんですね。韓国は「すぐに加盟しましょう」と言いそうですが、骨のある国ですね。
美根:韓国は中国の顔色をうかがっていたのです。TPPには入らず、緩やかな関税同盟を作りたいのが中国流のやり方です。朴政権の成立以来の特徴でしたが、中国と非常にいい関係を築いていた。朴さんは中国語ができますし、中国の古典が好き。個人的にも、政治的にも、北朝鮮がやきもちを焼くくらい、習近平政権と朴槿恵政権の関係がよくなりました。そのうえ韓国の対中国貿易は輸出入とも断然一位。経済的にも重要なパートナーで、中国の意向はできるだけ大切にしてきました。
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