「東大推薦入試が塾に攻略された」は誤解だ 「14名合格」のAO義塾に疑問をぶつけてみた
さて、2月18日に配信された読売オンラインの記事「初の東大推薦入試 面接でズバリ聞かれた『あの質問』とは」によれば、「AO義塾では昨年秋、受験生8人を対象に出願書類の作成をサポート。さらに昨年末には、この8人を含めた27人を対象に、面接などの2次選考の直前対策講座を開いた」とのことだ。
27名中14名が合格したというのだから合格率は51.8%。これだけ見れば確かにすごいが、この数字にはからくりがある。上記27名は全員がすでに東大推薦入試の1次選考を通過した受験生たちだったのだ。
対策講座受講者と非受講者の間に合格率の差はなし
今回の東大推薦入試の1次選考出願者は173名。そのうち149名が1次選考を通過した。AO義塾が言う27名はすべてここに含まれる。そして149名中77名が2次選考に合格したということは、1次選考通過者の最終合格率は51.6%ということになる。
AO義塾で対策講座を受けた受験生とそうでなかった受験生の合格率はそれぞれ51.8%と51.6%。有意な差はない。つまり「AO義塾の東大推薦入試対策講座に明確な効果があるとはいえない」ということをこの数字は物語っている。
にもかかわらず、各メディアはAO義塾の「実績」を大きく取り上げた。そこから転じて、「東大推薦入試が初年度から塾に攻略されてしまった。ダメじゃん」という主旨の言説がネットでは広まった。しかし、上記からわかるように、東大推薦入試が一部の塾によって「攻略された」とはまったくいえない。
1次選考通過者を対象に対策講座を行うというのなら、他塾が同様のサポートを提供しても、ほぼ同等の結果を出すことができただろう。AO義塾の「14名」を上回るためには、確率論的には、1次選考通過者を27名以上集めればいいことになる。
なぜ1次選考通過者の5.5人に1人を集められたのか?
AO義塾のホームページトップでは東大推薦入試合格者の「5.5人に1人」がAO義塾生であることをうたっているが、それも驚きに値しない。あえて今回の結果の驚くべき点を挙げるなら、そもそも、1次審査通過者149名のうち27名すなわち「5.5人に1人」がAO義塾に「通った」ということだ。
AO義塾は2次選考の前日に東大推薦入試対策「直前講座」を、その1週間前には1泊2日の「合宿講座」を実施した。入塾金・授業料・交通費・宿泊費はすべて無料とした。そのほか、東大推薦入試「2次試験対策講座」を「無料」で「毎日」実施中とホームページに掲げた。地方からはスカイプで受講できる。利益度外視で1次選考通過者を呼び込む作戦を展開したのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら