「東大推薦入試が塾に攻略された」は誤解だ 「14名合格」のAO義塾に疑問をぶつけてみた

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しかし、だとしても、ただでさえ推薦の権利を得た受験生が全国に散らばる推薦入試で、どうやってそれほど効率的に「集客」できたのかは謎だ。

AO義塾代表の斎木氏は、NPO法人リビジョンの代表でもある。高校生を対象としたビジネスプランコンテスト「未来創造甲子園(通称NES)」や政治熟議イベント「全国高校生未来会議」を展開している。「全国高校生未来会議」には文部科学省の後援もついている。その運営をAO義塾のスタッフや生徒が手伝っており、全国の意識が高い高校生との接点が多いことが関係しているのかもしれない。

塾業界のガイドラインには沿っていない合格者数

そもそも「合格実績」のカウントの仕方も不透明だ。

塾業界には、合格実績に関するガイドラインがある(公益社団法人全国学習塾協会「自主基準実施細則」<第2条2-六>)。無料の体験授業を受講しただけ、直前対策講座をちょっと受けただけ、模擬試験を受けただけの生徒がその塾の合格者としてカウントされることを防ぐための、業界内紳士協定のようなものだ。

簡単に説明すれば次のような条件だ。「入試直前の半年間のうち少なくとも3カ月以上その塾に在籍していること。あるいは集中的に50時間以上の指導を受けていること。そしてそれらは有料でなければいけない」。合格実績表示があまりに悪質な場合には、「優良誤認表示」の誇大広告(景表法4条2項)として消費者庁からの指導が入ることもある。

今回のAO義塾の場合、東大推薦入試対策講座が無料であることから、まずガイドラインには沿っていない。週刊新潮の記事でAO義塾が認めているように、27名中少なくとも19名は1次選考通過後のサポートのみだったという。1次選考の合格発表は12月1日、2次選考は12月19・20日であり、彼らが3カ月以上在籍していたことも50時間以上の指導を受けたこともあり得ない。

必ずしもガイドラインに従う必要はないが……

推薦入試において1次選考通過者を対象として直前対策講座を実施し、そこからの合格者を自塾の実績にしていいというのなら、一般入試においてもセンター試験を通過した東大受験者を対象に、2次試験直前に無料で予想問題模試&解説授業を実施して、そこからの合格者も「合格実績」としていいことになる。

センター試験通過者は例年9000人程度だから、仮に「5.5人に1人」集まったとすれば、1600人あまりの受講生になるはずだ。その中から例年の2次試験の合格率どおり3分の1の確率で合格者が出れば、その数は500人を超える。「東大に500人合格」は塾にとって強力な宣伝文句になる。

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