ショーンK「熱烈擁護意見」がはらむ危険性

詐称は相互信頼で成り立つ仕組みを破壊する

仕事に関しての関係ならば、業務を進める上で、ビジネスパートナーとなる相手にどんな経験があり、どんな場面で助けになるかなどは意識した上で仕事をするものだろう。そこに自己紹介としての経歴が加わると、なおさらである。

たとえば「大手のA社で事業開発部門に所属し、過去に他社と協業でよく知られた事業立ち上げを企画、事業化までをリードしました」と名刺を渡したとしよう。しかし、A社の社員でもなく、過去に類似事業に携わったことがない人物が詐称していたとしたら、どうだろうか。

フリーランスにとって肩書きは役に立たない

一方、知名度が低い中小企業に勤めていたり、筆者のようにフリーランスで働いている場合、名刺交換をするだけでは自分がどのような人物なのか、想像してもらうことすら困難だ。”ジャーナリスト”や”評論家”、”コンサルタント”といった、著しく個人の能力に依存する業態の場合はなおさらで、何を説明しても”自称”にしかならない。

このため、差し出す名刺がどのような肩書きかよりも、自分が過去にどんな仕事をしてきたのか、その履歴の方が重要になる。もちろん、履歴を1日で作ることはできないため、毎日の仕事の中で積み重ねていく。フリーランスで記事を書き始めたころ、業界の先達に「名刺代わりに本を書け」と言われたものだが、それも”自らが何者であるかを知ってもらう”ために、もっとも有効な方法だからだ。過去の履歴がないのであれば、ひとつひとつを作っていかねばならない。

実際のところ、どこの馬の骨ともわからないフリーランサーが「自分はこのような経験とスキルを持ち、どのようなサポートができます」と話したところで、いきなり話を聞いてもらうことは難しい。

筆者の場合、編集部の紹介で取材に入り、話を聞き、記事を書いてを繰り返していくことで実績を作った。しかし、中には1度だけしかコメントを出したことがない媒体や、記事が掲載されたことがない媒体ロゴを、名刺に印刷している人たちも少ないながらいた。その方が相手からの信頼を勝ち取りやすいのもまた事実なのだろう。

しかし、経歴や実績の詐称に対して寛容な社会となっていけば、そんな拠り所のなにもない相互信頼は成り立たなくなる。

取引相手との信頼関係構築に苦心してきた人たちにとって、”経歴詐称”は小さな嘘ではない。相互理解を深める最初の大きなハードルを不正にパスし、何の裏書きを持たない人間が努力と時間の積み重ねによって階段を上っていくことを馬鹿にした行為に見えるのだ。

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