──東京大学地震研究所の地震予知研究センター長でもありますね。
日本での地震の予知は、科学一般のように単に将来予測するのとは違う。予知や予測をすることで地震による災害、被害を減らすのに役立つことに意味がある。そのアプローチも科学として予測することが重要で、国や自治体の対策も納得できる科学的な知見があって初めてできる。
期待されているような予知はできていない
──しかし予知はできないとも。
明日東京で地震が起きると予測すれば必ず当たる。毎日何らかの地震は起きているから、この断言は正しい。だが、それは当たり前のことを言っているのであって意味はない。突き詰めて言えば、現時点では期待されているような予知はできていない。できるという人は世の中にたくさんいるが、今の科学技術をベースにすれば、たとえば来週Mいくつの地震がどこで起こるかといった予知はできていない。
──緊急地震速報はあります。
この20年で精度が上がり、10秒後に強い揺れが来るという警報は鳴らせる。気象庁が緊急地震速報(警報)を出す。地震が発生したことを早期に検出して、まだ少ししか揺れていない段階であと10秒後に来るといえる。揺れを予測する点では似ているが、これは普通の人が思っている予知とは違う。
──なぜ精度が高まったのですか。
地震計がたくさん設置されるようになったからだ。センサーがたくさんあれば、その精度はよくなる。今、そのための地震計が1000カ所ぐらいにある。地震は最初にP波という小さな縦揺れが来て、後からS波という大きな横揺れが来るので、最初に地震が起きたすぐそばでP波を検知して、後から来るS波が何秒後にどこに来そうか、速報できる。
──一方で首都直下地震は「30年以内、70%」の確率で起こるとも。
明治末期からの100年間に南関東でM7以上の地震が5回起きたという事実がある。単純平均で20年に一度起こる。20年ごとに等間隔で起きたのではなく、統計学のポアソン過程モデルを援用し、1世代30年の時間幅にすると確率は70%になる。地震本部・地震調査委員会のホームページに、10年ごと50年以内までの発生確率が載っている。
──予知研究をしていけば、予知は可能になるのですね。
それは地震の種類による。プレートの境界に近い所で起こる地震については、観測をきちんとしていればいつ、どこで、どのくらいの大きさの地震が起こるかもわかる。現にできているものもたくさんある。だが、一般的にどんな地震でも予知できるかといえば将来もありえないだろう。
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