MRJに迫るライバル機、「2年先行」を守れるか 三菱航空機の森本浩通社長に聞く

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――事業である以上、販売を通じて開発費など巨額の先行投資を回収し、最終的な事業収支を黒字にすることが求められます。損益分岐点の目安となる機数は?

受注時の値引率や為替の動向、実際の量産コストがどこまで下げられるかなど、まだ不確定要因が多すぎて、現時点で明確に損益分岐点が何機とは言い切れない。もちろん、社内ではいろいろな試算をしているが、かなり幅を持った数字になっている。

ただ、採算ラインうんぬんは別にして、意識している数字はある。リージョナル機の場合、1000機売れれば成功したヒット機種と見なされるようなので、最低でもそれぐらいは売らないと。社内の目標はもっと高く、1000機は絶対にクリアすべき必達目標だ。

――その必達目標の実現には何が必要と考えていますか。

もちろん、製品となる機体そのものの開発を計画通りに進めることが必須だが、それだけでは不十分。旅客機メーカーは機体を造って引き渡すだけの単純な商売ではなく、顧客エアラインへのサポート、アフターサービスが非常に重要になる。いくら機体が優れていても、サポートに不安があればお客さんは買ってくれない。こうしたサポート体制一つをとっても、当社はまだ準備段階なので、これからそれを作り上げていく。

日本の航空機産業の未来を背負っている

――具体的には?

森本浩通(もりもと・ひろみち)/1977年三菱重工業入社。発電設備の営業畑を歩む。三菱重工米国社長を経て2015年から現職(撮影:梅谷秀司)

たとえば、エンジンニアが常駐して、エアラインからの問い合わせに対応するオペレーションセンター。時差があるので、恐らく日本と米国の両方に設置することになると思う。また、交換部品をスピーディーに供給できる体制も必要。そのためのデポを作らないといけないが、米国は国土が広大なのでデポも複数カ所になる。どこに作るのがいいか、ロジスティックスをどうするか。その辺りを今、まさに議論しているところだ。

飛行中の機体からデータを受け取り、何らかの不具合を察知したら、着陸した段階ですぐにエアラインが対応できるようサポートするモニタリングシステムも導入する。これを一から作るのは大変なので、ボーイングと契約を結び、彼らのシステムをベースにMRJ用にカスタマイズする。それ以外にも整備や運航マニュアルの作成、シミュレーターを使ったパイロットのトレーニング訓練サービス、さらにサプライチェーンを含む量産体制の準備など、やるべき課題は山ほどある。

――それらの条件をすべて満たし、事業を成功させる自信は?

昨年の初飛行では、多くの方に励ましの言葉をいただき、天皇陛下も飛んで良かったとおっしゃってくださった。国産旅客機へのチャレンジは半世紀ぶりとなるだけに、多くの方々がMRJを応援してくれている。そうした大きな期待を背負っているわけで、失敗は許されない。もっと言えば、日本の航空機産業の未来を創るんだという気概を持って、われわれはこのプロジェクトに取り組んでいる。

事業として成功させるために越えるべきハードルは高いが、それは最初からわかっていたこと。いまさら泣き言をいってもしょうがない。開発を始めとするさまざまな課題を一つ一つ着実に乗り越えていく。ここから先はまさに総力戦。三菱の力を結集して、このMRJ事業を絶対に成功させるつもりだ。

山本 直樹 東洋経済 記者

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やまもと なおき / Naoki Yamamoto

『オール投資』、『会社四季報』などを経て、現在は『週刊東洋経済』編集部。

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渡辺 清治 東洋経済 記者
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