MRJに迫るライバル機、「2年先行」を守れるか 三菱航空機の森本浩通社長に聞く

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――次こそはスケジュールを守れるのでしょうか。

三菱航空機は昨年暮れ、4度目となる納入開始スケジュールの延期を発表。会見では報道陣から厳しい質問が相次いだ(撮影:尾形文繁)

絶対とは言い切れないが、さらなる遅延がないよう全力を挙げて取り組む。TCをスケジュール通りに取得するためには、膨大な飛行試験プログラムをいかに効率よく消化していけるかが重要になる。そこで、2016年後半からは米国ワシントン州のモーゼスレイク空港を最前線として、飛行試験を行っていく。同空港は飛行区域や空港使用時間帯の制限が少ないため、日本でやるよりも効率よくテストプログラムを実行できる。

同じワシントン州のシアトルにはエンジニアリングセンターを置き、試験計画の立案や技術課題の対策を考えたり、飛行試験で得られたデータの解析、設計へのフィードバックなどを行う。こうした体制を取ることで、飛行試験に関連した作業の多くは米国で完結させる。一方、日本は型式証明のための解析やペーパーワークをはじめとした調整、一部設計修正を主に手掛け、日米3拠点が連係する形で作業を進めていく。

また、開発作業に関わる人員も増強し、防衛関連で完成機事業の経験を積んだエキスパートを重工本体から補充する。飛行試験の最前線となる米国には日本から人員を投入するだけでなく、経験豊富な専門技術者を現地で大量に採用する。ボーイングの試験業務を受託している米エアロテック社にも協力を仰ぎ、シアトルは200人規模、モーゼスレイクは最盛期に350~400人の体制を組む予定だ。2016年前半はそのための準備に注力する。

――今回のスケジュール延期について、重工本体の宮永俊一社長は何と?

宮永社長は「とにかく安全でいい飛行機を作ってくれ」と。早くやれ、急げといった、せかすような発言は一切ない。恐らく、多くの言葉を飲みこんでくれているんだと思う。

初飛行の後は商談の内容が濃くなった

――三菱航空機の社長に就いてから今年4月で丸1年。重工本体でガスタービンなど発電設備の営業に携わってきた森本さんにとって、旅客機事業はまったくの畑違いでしたが、この事業の難しさをどう感じていますか。

やはり何と言っても開発。その難しさを痛感している。旅客機の開発は途中で何があるかわからない。試験をやってみて、想定しなかった問題点が出てくることも多々ある。その都度、原因をつきとめ、問題点を解決する。そういった行ったり来たりの作業の繰り返しで、まさに二歩進んで一歩戻るという感じ。だから、なかなか先が見渡せず、スケジュールやかコストの管理が極めて難しい。しかも、われわれは新規参入なのでなおさらだ。

――現在のところ、MRJの確定受注はエアライン6社からの223機、仮予約・購入権分を含めて407機。さらなる受注獲得も大きな課題です。

2月に開催されたシンガポールエアショーで、米エアロリース社と最大20機の契約基本合意に達したことを発表した。2014年夏にJAL(日本航空)さんとの合意を発表して以降、新規受注に関するニュースは1年以上途絶えていたので喜びもひとしおだ。

今回の基本合意は、MRJには投資価値があるとリース会社から認められた点に大きな意義がある。リージョナル機も今後はリース会社からのオペレーティングリースで機材を調達するエアラインが増えていくと思う。われわれにとっては、リース先にまで顧客が増えていくわけで、今回の合意でこのリースマーケットへの橋頭堡を築くことができた。

MRJが飛行試験段階に入り、受注活動にもいい意味で影響が出ている。2015年11月に初飛行して以来、商談の内容が濃くなり、真剣みを帯びた話が増えてきている。交渉事なので詳細はお話しできないが、具体的な話も出てきている。2月のシンガポールエアショー会場での反応も良かったので、さらなる受注獲得に大いに期待している。

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