「伝わる英語」習得術 理系の巨匠に学ぶ 原賀真紀子著 ~目からうろこが落ちる「名回答」引き出しに脱帽
2回の英語圏への留学経験を持ち、東工大で教える著者による、使える英語をどうやって身につけたらよいかをテーマにした対談集。作詞家であり精神科医でもある、きたやまおさむ氏、物理学者でノーベル賞を受賞した小柴昌俊氏、解剖学者であり『バカの壁』の著者として知られる養老孟司氏、長寿の聖路加国際病院名誉院長、日野原重明氏など、著者が「理系」と分類する、世界で知られる著名人の英語習得法を忌憚ない質疑応答の中から探り当てようとする。
よくある英語習得本と違って、テクニックとしての英語上達法をこれら理系の頭脳たちは一刀両断のもとに切り捨てる。対談者個人の発するメッセージは強烈にして、説得力がある。伝えるべき内容がなければ、いくら英語(あるいは他の外国語)がうまくなっても仕方がない。時に爆笑を呼ぶようなユーモアや歴史理解が相互理解に不可欠。英語と日本語では根本の発想が違うため、コミュニケートには発想を変えるところから始める。英語は具体的なことを表現するための言葉であるなど、英語学習者のみならず外国人と接することの多いビジネスマンに役に立つ金言が相次ぐ。
面白いのは対談者の何名かが英語履修の初期の段階でネイティブ教師によって、英語を耳から叩き込まれていることだ。読み書きの前に「音」として英語を流し込む、この有用性は確かにありそうだ。しかし、そうした教師に恵まれなかった人も嘆くことはない。対談者の一人は、NHKラジオ講座「基礎英語」などで十分英語の基礎が身についたという。ほかにも、外国人向けのプレゼンテーションでは日本人であることをやめるなど(同意不同意は別として)、目からうろこが落ちるような多くの「名回答」を引き出した著者に拍手を送りたい。
はらが・まきこ
ジャーナリスト、東京工業大学非常勤講師。1969年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒、米ノースウェスタン大学ジャーナリズム大学院修了。旧第一勧業銀行勤務、通訳・翻訳などを経る。
朝日新書/819円/278ページ
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