小宮山 宏・三菱総合研究所理事長、前東京大学総長--『課題先進国』の日本、先頭を走る気概を持て
少子高齢化、環境など日本が今抱える問題は、今後21世紀の人類全体の課題となる。そう強調するのは前東京大学総長で現在、三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏。諸課題をマイナスにとらえず、積極的に解決へ向けかかわっていくことが、日本の勝ち残る道だと主張する。
--日本を「課題先進国」ととらえていらっしゃいます。日本に求められる優先課題とは何でしょうか。
やはり、先頭を走る気概だと思います。先頭を走るという意味は、これからの新しい社会の姿とはこういうものだということを、自分たちで実験していく覚悟を持つこと。これが日本には欠けている。
21世紀は明確に時代が変わりました。金融をはじめ従来システムが破綻し、条件も変わった。何が変わったかと言えば、三つある。一つは無限だと思っていた地球が有限になったこと。そして社会の高齢化。もう一つは知識の爆発(学問における知識・情報の幾何級数的な増大と同時に、学問領域の細分化・課題の複雑化が進行していること)です。
今は、新しい社会の姿を決める競争なのですよ。その最も大きいものがこの三つ。これらに対して人間社会はどんな姿でありたいのかが問われている。一つの答えはエネルギー、環境に配慮したエコ。もう一つは高齢化に対応したモノづくりです。
さらには、グーグルの後に出てくるであろう、もう少し人間にとってフレンドリーな知識基盤です。知の構造化(日々蓄積される大量の知識を多様な構造化技術を用いて、新たな知的価値、経済的価値、社会的価値、文化的価値に結びつけること)とも呼んでいます。
--世界の潮流が変わる今こそ、日本の役割は高まっている、と。
日本には国家ビジョンがないとか言われるけれど、「課題先進国」というものも国家ビジョンの一つだと思っています。エコや有限の地球、高齢化社会の課題を具現化しているのが、まさに日本。もともと国土が狭くて人口があふれていて資源がない。これって地球の姿と同じです。