「10年で変わらなければ東京は完全にダメになる」−−森ビル社長 森 稔
--今の47都道府県のままでは都市を活性化する絵もなかなか描きにくい。道州制のような行政単位のくくり直しが必要では?
道州制は広さにこだわっているけれども、要するにどこの都市に属するかを決めればいいわけで、広さで考えることはない。今の制度は、ダメなところに一所懸命おカネを配っていますが、人が集まらないところにおカネを配っていてはダメですよ。やはり人が集まるところに配るのでないと。いわば人ではなくて場所におカネをつける。そのあたりの仕組みを考えないといけない。
人は何らかの理由があって集まるわけで、その何らかの理由が都市の磁力です。たくさんの磁力源があれば、たくさんの人が集まるし、磁力源が一つでも、その力が強ければ、わっと人が集まる。東京はそれこそ、たくさんの街が集まっていて大きい。一つの街ではない。
国際金融センターといわれる都市も、立地は意外に分かれていますよ。ニューヨークでもダウンタウン、ミドルタウン、その周辺とだいぶ散っている。ロンドンもシティのほかに、カナリーワーフとウエストエンドがあって力が強い。東京にも国内向けの金融センターとか、証券関連の金融センターとか、いろいろあっていい。
--そのグランドデザインを誰が描くのかということですね。
これも競争ですよ。だって、いいデザインを描いて早く実行したところが勝つわけでしょう? いくら条件をそろえていても、後から来たのではもう出遅れ、お呼びじゃない、ということもあるわけだから。
どうも早くから発展した街ほど執着度が強くて変わらない。新しいところのほうが変わりやすいといった面があるようですね。(六本木ヒルズやアークヒルズをつくった)港区なんかは、かつては都心だとは扱われていなかったですから。
--今では都心のド真ん中という感じですが。
一昔前は、そんな田舎を開発して何をするんだと言われた(笑)。
--どれくらいの期間で東京をつくり変えるイメージですか。
上海は10年でまったく違う街になりましたね。
--では10年?
過去の都市計画を見てもそうですが、10年や20年あれば全部変わってしまう。ロンドンとかパリとかニューヨークもそんなものです。
--10年か20年で変えられれば、東京の競争力は維持できますか。
森ビルだけでできる話ではありませんが、変えなければ完全にダメになるでしょうね。
(山崎豪敏、長谷川高宏 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)
もり・みのる
1934年京都府生まれ。59年東京大学教育学部卒。同年、父・泰吉郎氏が森ビル設立、大学卒業と同時に取締役に就任。64年常務、69年専務を経て、93年より社長。政府の委員なども多数歴任。
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