キンドルが変える! 出版業界の“旧秩序”《アマゾンの正体》
6月のダウンロードは前年比136%増を記録
オンライン書店最大手のアマゾンがリアル書店最大手に完勝した流れの中で始まった“第二の事象”が、電子ブック端末の急速な普及だ。アマゾンが07年11月に売り出した「キンドル」が、今年2月の「キンドル2」、6月の「キンドルデラックス」投入後、鋭角的な急成長を始めているのだ。
全米出版社協会によれば、08年のインターネット経由でダウンロードされる電子書籍コンテンツの売り上げは約1億1300万ドルで、07年と比べて68%伸びた。また、同協会の直近の発表によると、ギフトシーズンでもない今年6月に電子書籍のダウンロード売り上げは対前年比136・2%増という記録破りの1400万ドルとなった。
数年前、日本ではソニー、パナソニックなどが展開する電子ブック事業が無残な敗退をしたばかり。モノクロ画面のうえ、ページをめくるのに時間がかかるなど、技術的な課題は今も変わっていない。なのになぜ、米国ではヒットしたのか。
その秘密は、まず「コンテンツの豊富さと安さ」。ベストセラー書籍をほとんどキンドルで読めるうえ、安い(下表参照)。新聞も割安だ(ウォールストリート・ジャーナルは月額14・99ドル。ちなみにアマゾンで紙の新聞の購読を申し込むと6カ月120ドル)。しかもダウンロードに用いるスプリント社の携帯電話ネットワーク料金はアマゾンが負担しており、ユーザーには追加負担がない。端末代金はキンドル2で359ドル、デラックスで489ドルと決して安くないが、コンテンツが安価なため100冊程度ダウンロードすれば元が取れるとの計算も成り立つ。
2番目が「持ち運びやすさ」。米国のハードカバーは重くて持ち運びに不便なものが多い。ペーパーバックは、紙質が悪く長期間の保管に適していない。キンドルなら最大のデラックスであっても重さはわずか535グラム。そこに3500冊のコンテンツを入れることができる。低消費電力のモノクロ電子ペーパーを採用し、1回の充電で連続40時間の使用に耐える。